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●バランスの全て-精油がホルモンに与える影響●
ペニー・プライス 筆

ペニー・プライス

何らかのホルモンバランスのくずれに悩んでいるクライアントは多く、精油がホルモンバランスに関連した人体への影響を理解することは極めて重要である。

ホルモンは非常に重い分子からできているため、精油の中に同じような分子が数多く存在する可能性はそれほど高くない。それゆえ、人間のホルモンを精油の分子で代用できるという考え方は本当は正しくない。精油の分子がホルモンの反応にどう影響をあたえているかは厳密に定義されていないが、精油がクライアントのホルモンの状態に良い影響を与えるような変化を体験したアロマセラピストは多い。

歴史的にホルモンレベルのバランスを保つのに用いられてきた精油の成分がいくつかある。今回お話しする成分は形も大きさも人間のホルモンとまったく同じではないが、まるでホルモンのように生体反応をひきおこし、中には同じレセプターに刺激を伝えるものもある。

 

アネトール

エストロゲン様作用があり、Franchommeと Penoelによると、催乳作用、通経作用がある。
アニスシード(特に)やスターアニス、フェンネルスイートに含まれる成分である。

フェンネル

筆者の意見としては、アネトールが含まれている精油の中で、フェンネルは作用がマイルドで心地よい芳香なので一番使いやすい。
フェンネルは古代から痩身法に使用されているだけでなく、セルライトや体液のうっ滞を軽減するとの評判がある。また、時にはミルクの量を増やすのを促すために牛に使用され、授乳中の母親にも同じような効果や、乳房腫脹の緩和のために使用される。さらに、少量月経、PMS、生理痛、更年期に伴う膨満感や不快症状にも使用される。

使用例:
少量月経の時は、月経終了後から一週間、フェンネルの湿布を使用する。少量のキャリアローションにフェンネル油6滴を混ぜて腰部のくぼみに塗布し、吸水性のない包帯でカバーする。ホットパック、あるいは似たようなものを20分以上使用し、不快に感じるまでおいておく。この方法は妊娠中には避けたほうがよいため、もしクライアントが妊娠を希望している場合は毎月チェックし、注意すべきである。

 

シトラール

Geldof (1992)らによると、この分子はエストロゲン様作用があり、ネズミを使用した実験においては前立腺肥大を招き、排尿を困難にさせた。Tisserand とBalacs(1995)はシトラールにはアンドロゲン様作用(ステロイド性の)がある可能性を示唆している。筆者自身はシトラールが含まれる精油を使用することで月経サイクルが整い、精神バランスが改善されたことがある。

ユーカリスタイゲリナ

抗感染作用、免疫刺激作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用がある。最大25%までシトラールを含み、更年期のような症状を長期間トリートメントするのに理想的な精油である。正しく用いれば、毎日少量の投与を長期間続けることで体を調整し、それにより症状も徐々に軽減され、クライアントが楽になる。

使用例:
Nさんは数年ほどふさぎこみと無気力症を患っていて、更年期に入った。研究していくうちに、筆者はユーカリスタイゲリナ(20滴)とローズ(5滴)のブレンドがもっとも適していると判断し、最終的にそれらを亜麻油20mlとサフラワー30mlで希釈して用いることにした。このブレンドを毎日朝と晩に胴体に塗布して用いた。わずか三ヵ月後、Nさんの気分のむらとほてりの症状に改善の兆候が見られ、エネルギーレベルも顕著にアップした。最初は10段階中3だった体調の自己評価数値も、6ヵ月後には8にまで上がった。現在もトリートメントは継続されている。

 

ジンゲロール

プロスタグランジンEに影響を及ぼすと言われ(Wagner ら1986),体内のプロゲステロン産生にも影響を与え得る。

ジンジャー

鎮痛作用、消化促進作用、カタル作用、去痰作用がある。プライスはインポテンツの改善に用いると言っている。また、狭心症や疲労感、不眠のような症状にも効果的である。ジンゲロールが精油に含まれる量は微量だが、それが通常のトリートメントやセルフトリートメントの進展を妨げるというようなことはない。ジンジャーは禁忌のない安全な精油である。

使用例:
ジェニーは第二子出産後、産後のうつと診断された。(出産後にはよくあることだが)、専門家はエストロゲンが優位になりプロゲステロンが不足していると診断した。そこでジェニーのセラピストはジンジャー、ゼラニウム、スコッチパインのブレンドを芳香浴と吸入で用いた。「これこそ私が必要としていたものだと思う」と本人が言うほど、芳香に対して素早くポジティブな反応があった。そしてこのブレンドで一週間に一度マッサージをし、それを6週間続けた。その結果、第二子に対する親としての新たな責任に対して、以前よりも立ち向かえる気力が起こり、ポジティブに受け止められるようになった。ジェニーは抗抑制剤に頼る必要がなくなった。

 

ビリジフロロール

卵巣にも精巣にも影響を与えると考えられ、男性にも女性にも有効と考えられている。

ニアウリ

ビリジフロールはニアウリに存在する。Price and Priceによればニアウリ油には鎮痛作用、抗炎症作用、結石溶解作用、放射線防御効果、去痰作用がある。ビリジフロールが含まれていることにより、生理不順を整え、受精率を上げられると述べている。

使用例:
筆者は妊娠を希望している友人に数年前にこの精油を使用した。友人の力になりたいと思い、他のセラピストが行った方法を調べた。その中で、Daniel Penoelは副腎の付近に高い濃度のブレンドオイルを用いて、経皮吸収量を上げるために副腎表皮をフリクションして刺激するようにアドバイスをくれた。しばらくの間この方法を試しみた。しかし友人がセルフマッサージをこの部位にするのは少し難しいとわかり、吸収速度が速い鼠径部に行う方法を教えた。生理は順調にくるようになったが、懐妊はしなかった。そこで私は足の関連反射区のマッサージに同じブレンドを擦り込んでみた。このトリートメントを続け、健康な食生活とストレス緩和のための瞑想も取り入れて10ヶ月ほどが経った時、私の友人は妊娠した。全てがこのブレンドのおかげとは言わないが、バランスを整え規則正しくするのに役立ったように思える。

 

スクラレオール

クラリセージに最大7%含まれる。分子はエストロゲンに非常に類似しており、催淫作用があると言われている。

クラリセージ

抗真菌作用、神経緊張性作用、再生、瀉血作用がある。スクラレオールがホルモン様作用をもっているので、PMS、更年期障害の症状(特にほてり)、少量月経、ホルモンのアンバランスによる老化肌に効果的である。

使用例:
1996年に何人かの生徒を対象にちょっとした試みを行なってみた。全員更年期によりほてりを経験していた。3分の1はクラリセージを希釈せずにパッチテストの要領で使用。3分の1は芳香浴と吸入、3分の1はキャリアローションで希釈し腹部にトリートメント。それぞれ10ヶ月間毎日行ってもらった。3つの異なる方法で使用したにもかかわらず、結果は全ての女性に、ほてりと不眠の症状に何らかの改善がみられるという面白いものになった。

 

結論

ホルモンのシステムに影響を及ぼすと考えられている精油はまだたくさんある。この点に関して筆者の経験から述べると、このような精油を用いたどのようなトリートメントでも少量を長期間で頻繁に使用することを勧める。そうすることで、体は自然にかつ安全に順応する期間が与えられ、効果が持続するような結果をもたらすであろう。

 
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