NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●フェイシャルに自信を持って●
キャロリン・マーシャル 筆

1990年代初頭にサンドラ・デイ・スクールにてトレーニングを受け、 同スクールのプロダクト・マネージャ-に就任。 その後、IFPA認定講師となり、North Area College Stockportで主任講師を6年務める。 10年ほど前から、個人のサロンを運営し、虐待などで人から触れられる機会に恵まれなかった子供達へのケア、学習障害児などへのケアにも熱心に取り組んでいる。

2006年のIFPAカンファレンスでワークショップの講師を務めた際、私は聴衆に向かって問いかけた。

「トラブルスキンのある顔に対して自信を持ってトリートメントしていますか?」
「クライアントの持つ最も多く見られる肌のトラブルは何ですか?」
「フェイシャル専用のメニューがありますか?」
「ボディトリートメントだけしか行わない事で、顧客を逃してしまっているのでは?」
多くのアロマセラピスト達は、肌の症状に対してフェイシャルトリートメントを行う事に自信がないようだ。何故なら、通常のアロマセラピースクールでは、フェイシャルの実習に多くの時間をかけていないため、アロマセラピスト達はフェイシャル用のオイルを調合して顔に塗り、トリートメントをする資格がないかの様に思ってしまっているからである。

カンファレンスでの、聴衆からのフィードバックは、やはり、「脚の背面のトリートメントなら自信があるけど、トラブルスキンに対するフェイシャルトリートメントには自信がない」という事であった。

フェイシャルワークは、クライアントの心理面においても身体面においても、大きな変化をもたらすことが出来る素晴らしいワークである。顔は、常に人に見られているため、肌のトラブルは、自信の喪失につながる。市場に出回っている全てのスキンローションや薬を試し、藁にもすがる思いで私達の元を訪れるクライアントがいる。アロマセラピスト達がそのようなクライアントの肌に触れる事で、必要は与えられ、注意深く精油を選べば、症状によって起こされた気分の落ち込みまで改善できるであろう。

一般的な肌トラブルには、敏感肌、乾燥肌、皮剥けのある肌、過剰な脂性肌、湿疹、乾癬などがあるが、これらは増加傾向にある。セントラルヒーティング、食べ物、ストレス、エアコン、大気汚染など、生活環境の全てが私達の身体の最大の臓器(=肌)に影響を与えているようだ。

前述のように、多くのアロマセラピストがフェイシャルトリートメントを提供する事に躊躇している様だが、IFPA認定アロマセラピスト程の精油の知識があれば、多くの一般的な肌トラブルの助けになれるはずである。フェイシャルを導入する事で、多くの新しいクライアントをサロンに呼び込む事も出来るであろう。多くの人が、マッサージは受けてみたいが、身体を他人にさらすのは恥ずかしい事だと思っている。フェイシャルトリートメントを導入すれば、クライアントが少しずつセラピストとの信頼関係を築くための最初の一歩となるであろう。セラピストにとっては、専門分野が増えるだけでなく、クライアントの肌タイプによってブレンドされた商材を使うことによって、さらに収入が増える事になるだろう。

トリートメントの手順

コンサルテーション

その症状にどのように気付いたか、どのような対処をしたか、どんなものを使用したか、その効果などを確認。肌がどのように感じるか、例えば突っ張った感じ、オイリーな感じ、痒み、熱感、冷感など。そして、ボディトリートメントの時と同様にトリートメントプランを立てる。肌だけではなく、人間全体をトリートメントする事を忘れてはならない。

クレンジング

メイクの下にどのような症状が隠されているかを確認する(男性もファンデーションを付けている場合もある)。通常、表面のクレンジングと、ディープクレンジングを行う。

  • 肌と毛穴の脂と汚れを落とす
  • 穏やかに血行を促進する。栄養素や酸素を皮膚組織に届けやすくする
  • 汗腺と皮脂腺の働きを活発にし、皮膚からの老廃物の排泄を促す
  • 精油とキャリアオイルの吸収を高める

クレンジング終了後、選択した芳香蒸留水をスプレーする。これは肌のpHバランスを整え、残留したクレンジング剤を取り除く効果がある。

この時点で、クライアントの肌をよく観察し、分析を行う。敏感肌か、艶はあるか、くすみはあるか、皮剥けはあるか。そして、突っ張った感じ、熱感、冷感などを聞く。分析により、どの精油、キャリアオイル、芳香蒸留水が適切なのかを選んでいく。

エクスフォリエーション(角質除去)

古い細胞を取り除き、肌色を明るくする作用がある。自然素材の角質除去剤として、細かくすり潰されたアプリコットやウォールナッツの種を含むクリームがよく使用される。これらの種が十分に細かくすり潰されていなければ、肌を荒らす原因となるので注意が必要である。角質除去とともに、ソフト・フェイシャル・ブラシが使われることがある。ブラシで顔、首、デコルテにゆっくりと円を描いていく。

角質除去は表皮層から古い角質を取り除き、新しい細胞の成長を促すと共に、これから使用する商材の浸透を高めるのに役立つ。この段階で、皮膚にダメージを与えないように注意を払いながら毛穴の詰まりを取り除いていく。

※マッサージとマスクの順番
クライアントのニーズにより、マッサージかマスクかを選んでいく。敏感肌の場合、マッサージを先に行い、後で鎮静のマスクをする事が望ましい。乾燥肌の場合、保湿用のマスクをした後でマッサージをして水分を閉じ込める。

マッサージ

この段階では、皮膚は精油とキャリアオイルをよく吸収するようになっている。精油を選ぶ際は、ボディトリートメントよりもずっと低濃度にする必要がある。私は1%以下で行っている。精油とキャリアオイルを選択した後、手のひらでオイルを温め、クライアントの鼻元にかざし、香りを嗅いで頂く。そして、頭皮、首、肩、デコルテを含むフェイシャルトリートメントを行う。

マスク

クリーム、ジェル、クレイ(粘土)、キャリアオイル、芳香蒸留水、精油などを混ぜ、必要に応じて温めたり冷やしたりて適用する。マスクの効用には、下記の様なものがある。

  • 栄養と水分を与える
  • 鎮静
  • クレンジング又は浄化
  • 皮脂の除去

小さなブラシで、目と口の周り以外の部分に塗っていく。目元には選択した芳香蒸留水で湿らせたコットンを乗せる(私はコーンフラワーの蒸留水が好きである。とても気持ちが良いから)。

マスクをしている間、クライアントは音楽を聴きながらただ休んでいても良いし、ハンド又はフットマッサージを受けていても良い。私はクライアントがマスクをしている間に背中のマッサージが出来るように、*ハイドロサーム・マッサージ・システムを利用している。

(※温水で満たしたマットの上に寝て、仰向けで全身のトリートメントが受けられるシステム。英国人セラピスト、ジョン・ホーマン氏によって開発された。)

クレイマスクは、取り除くのが難しいといわれるが、ジェルとクリームベースのマスクは取り除くのが容易である。天然のもの、又はセルロースのスポンジで拭き取るか、又は私がしているように、温めた芳香蒸留水のスチームタオルで拭き取りをする。この時、顔に塗布したマスクを完全に取り除く必要がある。私は肌のリフレッシュと鎮静、バランスのために、ネロリ、ローズ、ローマンカモミールの芳香蒸留水をスプレーしている。

仕上げ

もし最後にオイルを使用してフェイシャルマッサージを行ったのなら、そのままオイルを残し、保湿剤を塗る必要はない。もしクライアントがオイルの感触が好きではなければ、芳香蒸留水をスプレーし、ティッシュペーパーで押さえ、余分なオイルを取り除くと良い。

もし最後にマスクを使用したなら、少量の軽いクリームベースとキャリアオイル、精油、芳香蒸留水をブレンドし、顔に付けて保湿をする。

全ての工程はクライアントの肌に応じて行うものであり、料金は使用した材料に応じて課せば良い。

  • 高齢者施設の広間で、14時から16時の間ラベンダーの拡散を行い(11分の拡散と11分休止を繰り返す)10名の認知症患者の観察を行った。10名とも、普段より静かで落ち着いていることが確認された。
  • アルツハイマー患者は長期に渡って向精神薬と鎮痛剤を服用しているが、4週間に渡り、23時から翌朝7時の間に4滴のベルガモット精油を薬の服用前に使用したところ、薬の服用量が低下した。

芳香蒸留水について

何年もの間、私は芳香蒸留水の研究に情熱を持って没頭し、特に肌への効果に関する資料を集めた。芳香蒸留水は、恐らく、その酸性のpHによって肌のバランスを保ち、バリアとなるのに役立つのであろう。多くの市販されている製品は粗く、アルカリ性の性質を持つため肌にダメージを与える。(私が実験した時は、有名なスキンケア商品が、バスルームの洗剤と同じpHを持つことを発見した!)また、アルカリ性の製品は、肌に刺激を起こし、症状を悪化させ、感染症のリスクを高める。

芳香蒸留水は、とても穏やかで、皮膚刺激のリスクが極めて低い。初めて私が芳香蒸留水を使ったのは、水疱瘡のかさぶたのある子供へのトリートメントであった。精油の使用は刺激が強すぎると判断し、同量のペパーミント、コーンフラワー、ティートゥリーの芳香蒸留水をブレンドしてスプレーボトルに入れ、母親に1日2回適用するようにとアドバイスした。1週間後に会った時には、その子供だと分からない程症状が改善していた。母親は、スプレーの使用を始めてすぐに掻くのが止まったと話した。その後もスプレーを続け、かさぶたはすっかりと消え、跡も残らなかった。

この経験から、私は、芳香蒸留水についてもっと研究が必要だと考えた。芳香蒸留水と精油、すなわち植物全体を使用して、人間全体に対して真のホリスティックなトリートメントをしようと確信した。

自信を持って

もし貴方が肌トラブルに関心があって、自分のトリートメントルームで肌に対するケアをしたいと感じたら、最初のステップは目的にあったトレーニング・コースを探すことである。アロマセラピーに加えてスキンケアの勉強をすれば、自信を持って肌トラブルに対するトリートメントが可能になるのである。

表1 各症状に対する選択

湿疹

キャリアオイル
  • アボカド~細胞再生を促す、皮膚軟化、保湿
  • カレンデュラ~鎮静、創傷治癒
  • イブニング・プリムローズ(月見草)~再生、弾力性を高める
精油
  • ヘリクリサム、ヤロウ~抗炎症、細胞再生、抗菌
  • ペパーミント~痒みを押さえる
  • シダーウッド~不思議なことに、これが巧妙に効くのである!
芳香蒸留水
  • ラベンダー
  • ヘリクリサム
  • カモミール
  • コーンフラワー(眼にも良い)
基材
  • ビタミンEクリーム~イブニング・プリムローズ(月見草)から作られたもの
  • ジェルベース~フェイスマスクとして使用し、目元にはコーンフラワーを使用

尋常性座瘡(にきび)

キャリアオイル
  • ヘーゼルナッツ~油膜を残さない
  • ホホバ~皮脂と似た性質を持つ
  • マカダミアナッツ~保湿効果があり、表面の乾燥に効果的
精油
  • ローマンカモミール~鎮静、抗炎症
  • シナモン~抗菌、浄化
  • ゼラニウム~バランス作用
  • ネロリ~自信の回復、抗鬱、創傷治癒
  • パチュリ~収れん、創傷治癒
芳香蒸留水
  • ジュニパー~クレンジング、解毒
  • ゼラニウム~バランス、素晴らしい香り!

※皮膚表面を乾燥させないように注意する事

基材
  • ミルクベース~キャリアオイル、精油、芳香蒸留水を足す。軽いテクスチャーでべとつかない
  • ジェルベース~芳香蒸留水と精油を足して、にきびの上に付ける。又はフェイスマスクとして使用

表2 肌タイプ別の精油/キャリアオイル

脂性肌

キャリアオイル
  • ホホバ~皮脂コントロールを助ける
  • グレープシード~べとつかず、軽いテクスチャー
  • ヘーゼルナッツ~穏やかな収れん作用
精油
  • サイプレス
  • ジュニパー
  • レモン
  • ゼラニウム

乾燥肌、皮剥けのある肌

キャリアオイル
  • アボカド~細胞再生を促す、乾燥やダメージ肌への水分補給
  • ボレッジ~乾燥肌と敏感肌に鎮静と保湿をもたらす
  • ホホバ~全てのスキンタイプに。乾燥肌を保護する
  • マカダミアナッツ~栄養価の高いオイル。保湿を助ける
精油
  • ローマンカモミール
  • パセリシード
  • サンダルウッド
  • フランキンセンス

老化肌

キャリアオイル
  • ボレッジ~乾燥と老化が見られる肌に鎮静と保湿をもたらす
  • マカダミアナッツ~栄養価が高く、保湿を助ける。肌細胞の老化を遅らせる
  • セントジョーンズワート(浸出油)~日焼けや超乾燥肌から再生させる
精油
  • ローズウッド
  • キャロットシード
  • ローズアブソリュート
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