NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●モロッコ滞在記●
2009年(小松ゆり子)

2009年6月上旬から2週間、モロッコ一帯を旅してきました。猥雑な活気に満ちあふれたマラケシュ、さわやかな海風の町エッサウィラ、ダイナミックな地形を体験しながらひた走るアトラス山脈、見渡す限りピンクベージュ色に囲まれるサハラ砂漠…。人間の根源が凝縮されたようなモロッコの地を、縦断してきました。

広大なアフリカ大陸の中でも「マグレブ(アラビア語で"日の没する大地")と呼ばれるエリアの最西端に位置する国、モロッコ。

そんな最果ての地に旅するきっかけとなったのは、「世界で最も壮大なスケールで、野外トリートメント&昼寝をしてみたい!」という、まるで子供のような初期衝動です。しかし、シンプルで単純な思いほど、人を突き動かすもの(笑)。決行を2009年6月に定め、10ヶ月かけて準備し、最終的には私の他に4人の友人と旅立つことになりました。

ただの直観で決めてしまったモロッコ行きですが、調べていくうちにナチュラル・メディスンの視点から見ても、非常に興味深い土地であることがわかってきました。ダマスクローズの世界四大産地のひとつであることは有名ですし、モロッコ南部でしか採取できない、ビタミンE が豊富なアルガンオイルや、ミネラルに富んだクレイ「ガスール」の存在は知っている方も多いと思います。砂漠の国でありながらも、肥沃な大地の恵みが、様々な形で人々の生活に根付いている国なのです。

「モロッコのナチュラル・メディスンは、どのように人々の生活の中で根付いているのだろう!?」俄然好奇心の固まりと化した私が体感してきたディープ モロッコの中から、いくつかのトピックスをご紹介してみたいと思います。

ハーブ&スパイスの宝庫!

「シェルタリング・スカイ」や「バベル」などの名作映画の影響か、「世界の果てにある荒涼とした砂漠の国」のイメージが強いモロッコ。実はふんだんなフレッシュハーブが一年中市場に出回っているのです。中でも有名なのが甘い、甘―いミントティー!お酒が禁止されているイスラム圏の中で「モロカンウィスキー」の愛称を持つのも納得なくらい、いつでもどこでも一日中「クイっクイっ」とお茶を飲み干すモロッコ人たち。

ミントティ-用の生ハーブ

メディナで買い物をしようと入った店でも「まーいいから座れ座れ!」と促され、すぐにミントティーが供されます。現地の家庭にお邪魔したときも、まず出てくるのはおもてなしのミントティー。中身は実はミントだけでなく、その時々で様々なフレッシュハーブがミックスされます。

この時のレシピは:

ミント スペアミントの時も、ペパーミントの時もあるそうです。
ミントだけで何種類か混ぜるのもポピュラーな方法
ラターシュ 謎のハーブその1
マロー 謎のハーブその2。マローといってもブルーマローの花ではない様子
ベルディーシュ 謎のハーブその3…その後ゼラニウムと判明。
日本では馴染みがありませんが、ゼラニウムの葉をティーに使うのです!


そのままでは苦い「ガンパウダー」と呼ばれる中国茶を3回洗茶。 その後火にかけて、こぶし大くらいの砂糖の塊(!)をガツガツポットに入れます。 砂糖を溶かして均一の濃度にする意味で、何度もコップに注いではまたポットに戻すという作業を繰り返し、最後に生ハーブをどっさり入れて、さっと抽出。

これがウマイ!生ハーブの清冽さが、身体に染み渡ります。ものすごく甘いですが、慣れるとこの甘さがないとミントティーとは言えません。

なんと砂糖です! 固まりごとミントティーに入っていきます

お茶を入れるのはおもてなしの主である家長の務め。入れてくれたお兄さんに、「こんなフレッシュハーブふんだんに使ったハーブティーは、日本では5月くらいしか堪能できないから本当に贅沢でウレシイ!! フレッシュハーブは値段も高いし…」 と日本のフレッシュハーブ事情を話すと、とても驚いていました。

フレッシュハーブは年中格安で手に入るそうです。乾燥した各種ミントやレモンバーベナも袋売りで売っていますが、目算で200g以上入っていて5dh(60円程度)!さすがに砂漠エリアの町では、乾燥ハーブで出てくることもありましたが、そちらもとても美味しかったです。

飲む理由を聞くと「朝一番に飲むと目が覚める」「身体の渇きが癒される」「頭が明晰になる」など、いわゆる薬理効果を実感するがゆえに欠かせないようでした。お肉料理が主体のモロッコ料理のあとに、ハーブティーを飲むことは胃腸の調整にもなるのでしょう。

他にもたくさんのハーブが食卓に登場します。モロッコ料理で使われるハーブといえば、クミンの使用率がNO.1。レストランの卓上にも必ず「塩とクミン粉末」だけは置いてあり、新鮮なお肉をグリルしたものにこれを振り掛けるだけでもかなり美味しくいただけます。

また、意外や意外。アジア料理の専売特許かと思われたコリアンダーの登場率もかなりのもの!モロッコでは、成長の度合いが進んで細くなってきた葉を使っているようです。タジンにはもちろん、ラマダン(断食月)の軽食である「ハリラ」というトマトスープにもフレッシュ・コリアンダーがふんだんに入っていて、風味がたまりません。

あとは「ムサハン」という独自のスパイスミックス。 これは、買う店や家庭によってミックスが違い、10~20種類以上入っているようです。中身のブレンドを聞いても「もう覚えていないよ!」と言われてしまういい加減ぶりも、モロッコ感覚(笑)私は2箇所のスパイス屋で購入しましたが、あるスパイス屋のムサハン・ミックスは、バラの花びら(!)まで入っていました。 そう、モロッコはバラの産地でもあるので安価なのです。 その他八角やシナモン、クローブなど、中華食材にも、インド食材にも通じるブレンドで、そのままチャイとかにしたら美味しそうな内容。これらのスパイスを、頼んだグラム数だけその場でグラインダーで挽いて販売してくれます。

ムサハンの中身はこんなハーブたち 必要な分だけ天秤で計る

まだこんな秤使ってます

ハーブを挽くグラインダー
古いので、挽いてるうちに
発火しそうな勢い(笑)

このムサハンを使った即席ハンバーグが…これまた、ものすごい美味!

スークの片隅にある小汚いご飯屋さんで食べたのですが、肉のグラム数を指定すると、その場でたまねぎのみじん切りとひき肉にムサハンを練りこみ、焼き上がったらパンに挟んで渡してくれます。シンプルながらあまりの美味しさに、二日連続でテイクアウトしてしまいました!

もちろんハンバーグだけでなく、タジンやクスクスなど何にでも入れることができます。

 

ハーブ&スパイスの宝庫!

ハッサンの店の店頭。動物の頭だらけです。ローズなんかも売っている。

モロッコでかなりエキサイトした出来事の一つが、スパイス・スークでのハッサンとの出会いです。

スパイス・スークには東洋で言うところの「漢方薬屋」のような薬屋がたくさんあります。そしてモロッコの伝統的なスパイス屋には、薬草などを代替医療的に処方する他にも、重要な役割が…。実は、モロッコでは「魔術=マジック」の概念がごく身近に存在しているのです!

家の気を良くしたり、恋を叶える、心を強くするなどなど…様々な望みをポジティブに叶えるために行う白魔術。そして実は嫉妬深い人が多いお国柄のモロッコで、人知れず呪いをかける黒魔術…。その両方が日常レベルで行われているあたりは、なんだかバリ島にも似ています。

ハッサンは代々続くスパイス屋の息子で、なんとホワイト・マジックを使える人。もちろんマジックだけではなく、体調の不調などの健康の相談にものってくれる、いわゆる「漢方屋」兼「スピリチュアルショップ」の若旦那といった趣。

マジックに必要なものはハッサンのお店に行けばなんでも揃いますし、気軽に相談&調合してくれます。また、黒魔術にかけられたときにはその対応策も取ってくれるのです。そんな彼の店にあるのは樹脂やハーブ類だけではありません。マジックには植物だけでなく、動物の毛や皮などもたくさん使われるのです!

店で目に入ってくるものは、生きたイグアナ、乾燥した(笑)イグアナから、 ヒル、猛禽類のヒナ、剥製のような顔して生きているフクロウ、亀、亀、亀、トカゲ、トカゲ、ハリネズミ!シカ?の一種の剥製などなど…あちこちに吊るされたり、箱に入ってたり、うごめいていたり。

生あったかいトカゲ

こうして言葉にするとものすごいのですが、それらのすべてがモロッコの太陽にサンサンと照らされていると、まったくおどろおどろしい感じはしないのが不思議。ハリーポッターの世界に迷い込んでしまったかのように興味深い空間でした。

動物界、鉱物界、植物界、全てをふんだんに使う、まさに太古からの歴史を感じさせる真のナチュラルメディスン!「ここまで来てやらない手はない!」ということで、ハッサンにお願いして…ホワイト・マジックのオリジナル・ブレンドを調合してもらいました。

軽いコンサルテーションをしてマジックのテーマを明確にする と、「OK!」と、次々と様々な瓶から素材を集めていくハッサン。 ミルラなどの樹脂や名前も分からないハーブや香料の数々に加え、私の靴底のゴミ、髪の毛まで入っていきます。ちなみに「靴底のゴミ=その人が歩いてきた道のり」「右側の髪の毛=白魔術用、左側の髪の毛=黒魔術用」だそう(笑)そして全てを混ぜ合わせて細かくすりつぶします。

出来上がったレメディの一つは持ち歩き用で、これは誰にも中身を見せてはいけないとのこと。もう一つは香炉で焚く用で、身を清めてから週3日くらい焚くことでマジックを始動させるそうです。早速日本に帰って試しました!マジックの効果は…??まだこれからに期待(笑)といったところです。

モロッコ式銭湯&エステ?!

ヴィラ・マロックのハマム。
ここで20分蒸されます。

モロッコで有名なものの一つが「ハマム」です。ハマムはいわゆるスチームサウナのようなもの。公衆浴場的な庶民向けの激安店から、高級スパまで、様々なハマムがあります。普段は慎ましやかなモロッコの女性たちも、この「裸の付き合い」の場では、かなり大胆な姿で身体のお手入れに精を出しているとのこと。残念ながら、ローカルハマムに行く機会はありませんでしたが、プチホテル内の中級程度のハマムに行ってみました。

服を脱ぐと、石造りの部屋へと通されます。中はスチームが充満しているものの、「全然暑くないなぁ」という感じ。そう、日本のサウナと比べると、ずっと低温なのです。石のベンチに座って背中を壁にぴったりとつけておくように指示し、「20 minutes」とフランス語で言い残して去っていく係の女性。「ぬるいから楽勝!」と思っていたのに、5分を超えた頃からじわぁっとなんとも不思議な感じで暑くなってくるのです。15分も立つと毛穴も開ききり、たまに外気を吸いに席を立ちたくなるほど。その「ぬる暑い」モヤモヤ感との戦いがピークに達した頃に、ハマムレディが再度登場。

 ハマムレディは丁寧に私の身体にお湯をかけ流し、今度は黒いネットリとした物体を身体に塗り付けてきます。これぞ「サボン・ビルディ」「サボン・ノワール」などの名前で知られるオリーブオイルから作られたペースト状の石けん!石けんと言っても泡立ちはなく、ただ肌に塗るだけで、また「5minutes」と放置されます。この過程は、角質を柔らかくする効果がある…とのこと。ということは…??

 戻ってきたハマムレディに、石のベンチに横たわるように指示をされます。ハマムレディの手にあるものは、極東の日本でも見ることができる、「アカスリ専用タオル」ではないですか! 韓国土産でよくもらうアレと、まったく柄も一緒なのが驚き…となると、やることは一つ(笑)勢い良く全身の垢をこすりだされます。

モロッコに2週間滞在して思ったのは、暑い国ではあるけれど、日本のように湿気ていないということ。どちらかというと乾燥が強くホコリっぽい。この気候の違いのせいか、ザッとシャワーを浴びることは毎日するけれど、不思議と日本にいるときのように身体をこすり洗いしたい衝動がありませんでした。おそらく乾燥の中で「皮脂」を保持したいという野生の本能なのでしょう。

しかし、皮脂を洗い流さなくても乾燥は防げないのか、驚くほど足の踵の角質が日に日に増えていく。あまりに角質が増えて、割れ始めるために「ガムテープを持っていった方が良い」とガイドブックに書いてあったほど…つまり割れた踵をガムテで止めるのです!! たまった角質をこすり落とす「アカスリ」は、このようなモロッコの風土の中で必要なビューティ・ケアと言えるでしょう。

 ここでさらに投入されるのが、「ガスール」とよばれるモロッコの天然コスメ。いわゆる「粘土=クレイ」ですが、モロッコではあらゆるビューティ・ケアに使われます。ヘナや様々なハーブと練って髪の毛に塗布したり、フェイシャルのパックにしたり…その美容効果は日本でも有名。クレイのミネラル成分が、毛穴の奥の汚れまで吸着しながらもお肌を潤いで満たしていくのです。お湯で溶いて泥水状になったガスールが、惜しげもなく全身に塗りたくられ、しばらく時間を置いてからまた丁寧に洗い流されます。

クレイのおかげでかなりお肌はしっとりツルツルなのですが、もう少し保湿をしたい…という場合はオイルトリートメントを組み合わせるのがベスト。たいていのハマムは、オイルトリートメント用の部屋が併設されています。

 

ヴィラ・マロック内のハマム、マッサージルーム

施術で使われたのは、モロッコのアガディール地方の特産品であるアルガンオイル。オリーブオイルの約4倍ものビタミンEを含むことで有名です。そのリッチな成分と、モロッコ南部にしか群生しない希少な木からとれるオイルであることから、日本では高価なオイルとして販売されていますが、モロッコでは比較的安価に手に入れることができます。私はエッサウィラにある工房に足を運んで抽出行程を見学してきましたが、女性たちが、完全に手作業で抽出していました。こうした工房はモロッコの女性の自立支援プロジェクトとしても成り立ってきているそうです。

オイルの抽出方法も簡単にご紹介しましょう。アルガンの実を乾燥させ、種子を取り出して昔ながらの石臼を挽いていきます。この時に生の種子のまま挽いたものはコスメ用になりますが、種子を炒ったものを使うと、非常に香ばしい食用オイルになるのです。ペースト状になったものにぬるま湯を加えて手で更に絞りだしていくと、オイルだけが分離していき、アルガンオイルが完成します。搾りカスも家畜の餌になったり、種子を取り出したあとの殻は燃料になったり…と全てにおいて無駄がないのが素晴らしい!オイルにはローズやネロリなどの地元で採れる天然精油がブレンドされていることもあり、私はネロリ入りのオイルでトリートメントを受けました。

モロッコのオイルトリートメント…手技はどんなものだろう!? と思いましたが、これが場所によっててんでバラバラ(笑)ロミロミのように土地や家庭に受け継がれた伝統的な手技…と言うものはないようです。おそらく「ハマム+オイルでマッサージをする気持ちよさ」というものが伝統的なスタイルで、手技そのものは後付けなのでしょう。

モロッコはフランス領だったこともあることから、フランス資本が入っているホテルやサロンも多いので、フランス系のエステティックな手技がベースになっているのかもしれません。ある宿では「ベルベル・マッサージ」と書いてあったので、「これはひょっとして伝統的な手法!?」と思ったのですが、予想通り「ベルベル人がやってくれるオイルトリートメント」というだけ(笑)でも、蒸されてゆるゆるになった身体に、熟練のハマムレディが施してくれるトリートメントはどこで受けても至福!なのでした。

現地で揉んでみた(笑)

砂漠に出現した湖

最近自分のテーマとしていることに、「ボディワークというスキル=交易品をつかって、様々な土地や人と交流してみる」ということがあります。例えば夏のロックフェスティバル、夏祭りの温泉地…などなど様々な「場」に呼ばれては、その場にトリートメントスペースを作り、訪れる人トリートメントすることで交流することは、私にとってとても刺激になる経験なのです。

「モロッコでもボディワークを通じた交流を実践したい!」と思っていたものの、事前リサーチの段階では「ちょっとモロッコのお国柄では難しいかも…」という流れになっていました。戒律がゆるいとはいえ、イスラム圏です。女性は肌を見せず、ハマム以外の公共の場では非常に慎ましく、写真なども断りなしでは撮影できません。

逆に男性に関しては、外国の女性に対する声かけに非常に積極的であり、こちらからマッサージを申し出たりした場合は、大きな勘違いをされかねないのです。(もちろん全て男性がそういうわけではありませんが…)そういう訳で、この件に関しては、「インシャー・アッラー=全てはアッラーの神の思し召しのままに」というモロッコ特有のゆるい空気に任せることに決めて旅立ったのでした。

一緒に行ったのがセラピストやヨガのティーチャーだったこともあり、私たちは道中訪れる様々な土地や施設や遺跡を舞台に揉みあったり、YOGAをしたりしていました。当初の目的である「世界で最も壮大なスケールの野外トリートメント」も、もちろん達成しましたよ!マラケシュからモロッコ最大の砂漠があるメルズーガまで、2日かけて移動したのですが、1日目に宿泊したトドラ渓谷では見事な満月に遭遇することができました。その翌日、まだ満月が残るメルズーガのシェビ大砂丘の夜、見渡す限りの砂漠の中で砂の隆起に身を任せて寝転がると、まるで地球という巨大な充電器でパワーチャージされていくようでした。

オイルは使わず、素手で友人と交換セッションを行いました。天然のベッドである砂丘は、私の身体に密着するようにその形を変えていくので、いくら寝そべっていても疲れることがありません。もちろんそんな中で受ける施術はそのまま地球に溶けてしまうかのように気持ちよかったのですが、もっとすばらしかったは自分が施術する側だった時です。大地も、風も、月の光も、地球のすべてが私の施術をサポートしてくれているかのようで…地球の恵みから始まる「自然療法」の秘密の根源に、少し触れた気がしました。

さて、砂漠の翌日はメルズーガの町にホームステイすることになっていました。お世話になるのはマラケシュからずっとガイドをしてくれている「アスー」という名のベルベル人のお宅。アスーは約30歳(正確な年がわからないそう)。砂漠でノマド(遊牧民)として生まれ育っていたので、何の目印もない砂漠の中も悠々と自信に満ちて歩いていきます。「ボブ・マーリィ」と「ジミヘン」という(笑)ロックな名前のラクダを二匹所有し、ラクダを自由に操るラクダ遣いでもあります。普段は土地勘を生かして、ガイドとして活躍しているのです。

そんなアスーは非常に陽気!的確にディープモロッコを案内してくれつつ、一緒に歌ったり踊ったりしていました。そんな中で、道中あちこちで揉んだりYOGAしたり…という、普通の観光客ではない(笑)私たちの行動を不思議に思っていた様子。砂漠から戻って町に着くと「YURIKO、僕にもマッサージしてみてくれないか?」とオファーを受けました!もう信頼関係ができていましたから、「喜んで!」ということで、アスーのお姉さん宅で施術。今回もオイルは使わず、ストレッチを織り交ぜ、ドライハンドでの施術を行いました。

陽気なガイドのアスー推定30歳
ベルベル人のノマドです

アスーの身体は細いけれどしっかり筋肉がついています。ジムに行っている訳がありませんから、「日々肉体を使って生きている人」なのでしょう。古代の彫刻モデルがみんな筋肉隆々なのも、誰もが皆しっかり肉体を動かしていたからなのかもしれない…などと思いました。足は長く腰高。少し反り腰なのが気になりましたが、これは西洋人特有の骨格なのかもしれません。

オモシロかったのは背中。「こんな陽気なアスーも意外とがんばってるんだなぁ…」というくらいに肩甲骨周りが張っていました。しかも、まるでラクダのコブのようにこんもりした盛り上りが二つ!

「アスー、your back is like a RAKUDA」と言って、コリの様子を説明すると「RAKUDA遣いもRAKUじゃない?」とダジャレで切り返され、思わず一同爆笑(笑)(アスーは片言の日本語が話せるのです)

終了後は「hu… nice massage…thank you!」とすっかり生まれたてのようになった顔でお礼を言ってくれたので、ボディワークを通じた交流はひとまず成功!だったようです。その日の午後、アスーはとっておきの場所に私たちを連れて行ってくれました。なんと砂漠地帯に出現した湖です!ちょうど夕日の見える時間に湖に到着。

 

砂漠に現れた湖の夕日

素晴らしいロケーション!!ということで、また野外セッションしたくなってしまった私(笑)今度はドライバーのイブラヒムに声をかけてみました。彼もマラケシュからずっと一緒。毎年事故や死傷者も出るという、切り立った崖をひた走るアトラス山脈越えの時ですら、どっしりした信頼感と愛情あふれる安全運転ぶりで、それはそのまま彼の人柄を表しているようでした。

湖のほとりで、ドライバーのイブラヒムをマッサージ! ずっと笑ってます(笑)

ワクワクと不安入り交じった表情のイブラヒムを湖のほとりに座らせ、施術開始。生まれて初めて揉まれるイブラヒムは、その「イタ気持ちいい」感覚をどうやって表現したら良いのかわからないようで、「ウヒヒヒヒヒ!ウヒヒヒヒヒヒ!」とずっと笑っています。くすぐったいのかと思ったのですが、そうでもないようで、とても喜んでいました。

初めてのマッサージ体験で勢いがついたアスーとイブラヒムはこの後人生初のYOGAにも挑戦!が、身体が固すぎて転がるばかりで、またもや爆笑の渦でした(笑)しかし、言葉が通じなくてもまさに「ボディランゲージ」。トリートメントやボディワークの気持ちよさというのは、国境を超えて人々を笑顔にするのですね。

さて、こんな感じで終わったモロッコ珍道中。実に「インシャー・アッラー」な旅でしたが、ナチュラルメディスン的にもボディワーク的にも、予想以上に当初の目的を達成することができました。不思議とあれだけの地の果ての国へ行ったのに、「二度と行けない」という気がしません。「きっとまた行くだろう」「これから長い付き合いになるかもしれない」という空気感なのです。

太陽や大地のエネルギーを太古のままに宿しているこの国は、ナチュラルメディスンのもっとも根源的なあり方を抱括しています。日本とモロッコでは人の体質も育つ植物もちがいます。しかし、「自然療法」という分野を実践するセラピストとして、このモロッコでの体験は、今後のセラピーへの取り組み方に大きな影響を与えるできごとでした。このように自分自身で体感してきたエッセンスを、またクラスの中で皆さんに伝えていけたら…と思っています。

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