NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●妊産婦のためのホリスティック&
クリニカルアロマセラピーディプロマコースが完成するまで●
2011年(中村あづさAnnells)

産前産後および分娩時における妊産婦ケアに、アロマセラピーケアを専門家として行う・・・デニス・ディランと共にこのコースを私がローンチさせたのは2003年頃、この概念はまだ日本にあまり知られていないものでした。

思い返せば当時はまだアロマセラピストやリフレクソロジストといった職業自体が日本に目新しく、プロの職業としてのセラピストがほとんど存在しなかったとも言えますので、そうした新しいボディケア・メンタルケアの概念を、日本では医療の領域が関係する妊産婦に適応する、ということは現実には想像しづらいと、関係者誰もが思っていたことと思います。

妊娠から出産、そして産後ケア(周産期、分娩そして産褥ケアまで)、女性にとって心と身体に大きな変化をもたらす期間。 その変化に伴う変化と不調和をどのように改善し、どうセルフケアを行うことができるのか?そしてその時間はもっと豊かに、もっとかけがえのないものになるはずだと、学べば学ぶほどにその気持ちを強めていきました。

すでに、多くのプロセラピストや助産師、看護師の方々が卒業生として羽ばたいていかれたこのコース。 コースが出来るまでの経緯と、その内容を御報告したいと思います。

 

産婦人科医の父に教わったこと

私自身が妊産婦のケアに興味を持ち始めたのは、もともと私が生まれ育った青森での小さいころからの環境が大きく影響していると言えます。

現在はすでに閉院していますが、父が青森市で産婦人科を開業していて、閉院するまでに1万3千人の赤ちゃんがそこで生まれました。病院が家の隣にあったこともあり、小学生のころから布おむつをたたむのを手伝ったり、入院している妊婦さんの食事の配膳を手伝ったりしていました。

布おむつをたたんでいた記憶は鮮明で、今でもその布の感触と香りを思いだすことができます。

現在兄や妹も父と同じ医師の仕事をしていますが、私自身はこうした環境で育ったことにより、医業という仕事の厳しさだけでなく、時代の流れと少子化の影響による、開業して仕事をしていくことの厳しさも、教えてもらうことができたと感じています。

 

「心と身体」のつながりを考えた、アスリート時代

兄弟の中では私だけがスポーツ競技の道に進み、違っ経験の中でメンタルトレーニングを受けたりなど、「心と身体」のつながりを深く考えさせられました。

「心と身体のつながり」――アスリートにとって、この言葉は独特な意味を持っています。心身の状態がどちらも整わないと、競技スポーツで結果を出すことは、トップアスリートが集まれば集まるほど難しくなってきます。これは、どんなトップアスリートにも同じ状態があり、私自身も身を置いた全国各代表が集まった大学代表チームでは、ある程度の極限までそれを感じながら試合に向かい続けていたと思います。

言葉ではなかなか説明がつかないのですが、私たちにとって大切なメンタルコントロールに関して、同じ女性として妊産婦さんが妊娠してからの生活や身体、そして心の変化に応用できないか?と思ったのも、おそらく小さいころから妊産婦さんがとても身近な対象であったからなのだと思います。なにかそこには直感もあったのかもしれません。

 

英国・ロンドンへ

私が英国・ロンドンにアロマセラピーを学びに留学した時にも、はじめからこの妊産婦ケアを行う目標を達成するために勉強に行きましたので、現地ではいろいろな情報や組織を探しては、顔を出したり、資料や文献を集めたりもしていました。

結果的には3年半の留学となり、日本に帰国しました。日本に帰ってきたときには、妊産婦ケアに対してのアロマセラピーは、そんなに有効的ではない、うまくいかないとたくさんの人に反対されました。

私はどうしてそのことを知らない人たちが、簡単に言葉だけで否定するのだろう?と疑問に思うだけではなく、自分が学び見てきたことを形にしたいと強く思いました。

しかし、まず足元を見ると、卒業したばかりの私に、何を言うことも示すこともできないことは明らかであり、まず臨床での経験として症例を積むことを第一の目的に掲げました。

勝手な自分の中での目標ではありましたが、自分で現場の症例が1000件に達した時点で、その症例を行った結果を持って、当時英国グリニッチ大学助産学主任講師/補完医療マタニティプログラムリーダーであり、「Clinical Aromatherapy for Pregnancy and Child birth」著者として唯一の専門家であったデニス・ティランに会いに行く準備をしよう!と次のステップを考えました。

今思うと、本当に勢いだけですが、とにかく症例や経験を踏んでいない私には、何を伝えることも乏しいと思ったのです。おそらくこれは競技を経験してきたことから、まず実際の現場での結果がいろいろなものを組み立てると実感してきたからなのかもしれません。

単なる資格や言葉を使う人間にはなりたくないと願っていました。

 

デニス・ティランを訪問

デニスの本は、イギリスでも唯一のアロマセラピー妊産婦ケアにおける専門書籍でしたので、私自身は留学当時1st edition(第一版)を購入して、足りない英語の知識で何度も何何度も何度もページをめくりました。そういった目標の人に会うための準備が整ったのは、2年後のことでした。 幸いにもたくさんのケアを毎日重ねることもでき、写真なども撮り集めることもできました。

おそるおそるデニスに自己紹介を兼ねてメールをしたところ、デニスからの返信があり、それはとても快く私が大学に伺うことを了承してくださるものでした。 その当時、デニスはグリニッジ大学で補完代替医療のコース主任をしていましたので、直接大学の研究室にお伺いすることになりました。

時々、今でも授業の際に、デニスはこの時の印象を生徒の皆さんに話してくれますが、症例を抱えてすごいガッツのある日本人がきた!と思ったそうです(笑)。 私が勝手に1000件の経験と決めてそれを実行してきたことに、驚いたようです。

しかし、この出会いが今のコースにつながり、そしてたくさんの話し合いを一緒に重ねることによって、本当に思いがつながったコースに仕上がってきたと思っています。

 

日本でのコース開講にあたって

英国と比べると日本では医療の法律も違いますし、医療として認められる枠組みも異なります。その中で、日本の産婦人科分野において、どういったケアを行うことができるのか?どういった知識や準備が必要なのか?産前産後のアロマセラピーケアだけではなく、アロマ分娩とは何か?ということは、授業の中で日本用に作り変えています。

そして、一番私とデニスが大切にしているのは、現場感です。それぞれの現場において実践できるスキルであるということが大切であり、さらに安全性を考えることは最重要課題と考えています。そのため、日本で行っている授業に関しては、現場の実際と共に、私の方でテキストや進行を考えました。

 

たくさんの書籍やテキストがありますが、やはり文字通りに現場は進みません。だからこそ、どれだけ実際の感覚を文字で伝えることができるか?ということも含め、現場での実際、妊産婦ケアにおける実際の症例、病院やサロン現場で生じるケアの実際、産前産後の妊産婦ケア、精油の安全性や精油を判断する力を養うこと、そして分娩時のケアや実際の妊産婦疑似体験、さらに分娩時の実際の映像を皆さんに見て感じていただくなど、他にはないライブ感のある授業内容としてお届けできる利点になっていると思います。

 

2011年の開講を間近に控えて

これまで卒業した多くの生徒の皆さんは、助産師さんや看護師さん、鍼灸師の皆さんをはじめてとして、アロマセラピストの皆さんも実際の産婦人科をはじめとして、サロンなどでもケアを実施されている方がたくさんいます。

こういった現場で実践していくためには、もちろんどう仕事として成り立っていくことができるか?という面でも、とても厳しさも伴いますが、時々卒業生の現場に伺って、そういった聞き取りも行っています。

理想と現実の狭間で、大変なことはたくさんあるにしても、多くの妊産婦の皆さんやベビーに出会うことができる、とてもエネルギーに満ち溢れた分野でもあると感じています。医療現場で働くにしても、サロンやスパで働くにしても、一番大切なことは、自分の判断力をつけることです。

自分に判断力がない場合には噂や情報に惑わされることが多くなり、自分がやるべきことを見失ってしまう人もいます。どんなケアでも同じですが、自分の中に1つずつ「判断力」をつけるために勉強することが必要で、だからこそ疑問を1つでもなくし、実際の現場で活用できるスキルを身につけることが大切だと考えています。

私自身もそういった意味でまだまだ勉強中ではありますが、判断力を軸として、自分の中確固たる自信を構築していけるような、そんな授業を是非一緒に共有できればと願っています。

 
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