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●ディエンチャン第一期開催報告●
2010年(飯野由佳子)

2010年12月。ベトナム発祥の新しい自然療法が、日本に初上陸したことを御存知ですか?

その名は「ディエンチャン」。

ベトナム語で「Dien」とは「面」、「Chan」とは「診」を意味するそうです。 「ディエンチャン」とは、その言葉が示唆するとおり「顔診断」であり、そこには顔の状態からその人の健康状態を推し量り、改善を促していく理論とテクニックが詰め込まれていると言います。

ディエンチャンの総指揮を務めるのは、国内外で大変な人気と知名度を誇るベトナム人鍼灸師であり、「プロフェッサー」の名で親しまれているDr. ブイ・クオック・チャウ(以降プロフェッサー)。

プロフェッサーと、そのアシスタントでフランス在住のインストラクター=イエン先生も、今回合わせて初来日。「ベトナムViet Y Dao 認定ディエンチャン・ディプロマコース第一期」が、「満を持して」という期待感溢れる空気の中、東京は恵比寿にて開講されました。

他では見ることのできない、オリジナリティ溢れる反射区チャートに惹かれて、リフレクソロジーを専門としている私も今回コースを受講してきました。

ディエンチャンの全容と、コース詳細をレポートします。

 

私とディエンチャン(Dien Chan)との偶然

私がディエンチャンを知ったのは、勿論ソレンセン式フェイシャルリフレクソロジーを通じてですが、他にもエピソードがあったのです。

初めてロネ・ソレンセンに会い、集中トレーニングを受けていた時です。合間に一人で観光するのが唯一の息抜き。その日も、スペイン・バルセロナから鉄道で一時間、更にロープウェイを乗り継いで、修道院が建つモンセラットという聖なる山へ向かう途中でした。

車内でたまたま知り合ったイギリス人の女子大生と、お互い「なんでまたこんな所にいるの?」という話になりました。
「フェイシャルリフレクソロジーという補完療法の勉強をしていて……」と私が言うと、彼女は驚いて、とっさに「これのことじゃない?!」とバックパックの中から、一冊のノートを取り出しました。

それがディエンチャン、プロフェッサー・チャウの神経ポイントチャートだったのです。

 

彼女はノートに全て手書きで(!!) 神経ポイントチャートを丁寧に写し取り、各器官に対応するナンバーも全て書き取っていました。彼女が旅行でフランス滞在中、フランス在住のお友達がディエンチャンの本を持っていて、そこから写したのだとか。本当に不思議な偶然でした。

その時、ベトナムの顔に対する療法が「ディエンチャン」と呼ばれていること、フランスでも創始者プロフェッサー・チャウは知られていることを教わりました。 (彼女はロネのことは知りませんでした。)

そして、このアジアの反射療法が、ロネを始めとするヨーロッパの人々を魅了しているのを感じていました。

 

ディエンチャンの反射学

西洋の人々をも夢中にしてしまう、ベトナム発祥のディエンチャン。 この療法の創始者は、鍼灸師でもあるプロフェッサー・チャウ。顔を通してクライアントの健康状態を読みとり、リモコンのボタンを押すように反射区やツボを刺激します。

リモコンの操作で機械が動き出すように、身体をコントロールし、身体に影響を与え、機能調整をしていく療法です。
いわば反射学なのですが、従来の反射学と違うディエンチャンの大きな特徴は、以下の2点だと思います。

多くの反射チャートが使用される

ディエンチャンには、従来の反射学と明らかに違う点があります。

同じ病気でも原因が人それぞれ違う、という理由から、多くの反射チャートが使用されます。 例えば顔の眉部分は、肩や腕の反射であり、足の反射であり、卵管の反射であり、肺の反射であり、背骨の反射でもあります。

プロフェッサーはこれを、“空間の幾何学” “一元論” と呼んでいます。

多くの道具が使用される

同じ病気でも原因が人それぞれに違い、一つの道具ではその違いに合わせられないという理由から、多くの道具が使用されます。
道具の片方は陰、片方が陽になっており、クライアントの症状に合わせて、陰を使ったり、陽を使ったりします。

道具には一つ一つ名前がついており、「ツボ探し棒」、「陰陽ローラー」、「陰陽ハンマー」、「コーム(櫛)」、「彗星棒」……など、可愛らしいネーミングばかりです。

その名も「ビジン」と名付けられたブラシもありました。
多くの反射チャートと多くの道具、さらに陰と陽とを考え合わせる。一見複雑なようですが、難しくはありません。

まず施術者が、クライアントの症状を聞き、直感で症状に合ったチャートと道具を選び、クライアントへ刺激を施します。クライアントの反応を聞き、もし効果があまり見られないようであれば、すぐ別のチャートや別の道具に変えます。

このように、これで反応が無いなら別のもの、これが合わなければ他を使う、と自由自在に対応していきます。刺激を施したすぐ後に、クライアントに「持っている症状が何パーセント位改善されたか」を聞きます。10~20%なら別の道具に変える、40%ならそのやり方を続ける、50~60%ならそのやり方でよい、80~90%でOK、治し過ぎない、となります。その場である程度の結果を出していくのです。

ディエンチャンの刺激法

ディエンチャンの刺激方法には、反射ゾーンを使う方法とツボを使う方法があります。

反射ゾーンへの刺激

顔面に描かれた反射区チャートへ刺激する(反射原則)だけでなく、痛みのある部分へ直接、ローラー、櫛、ハンマーを使用して刺激する(局所原理)、痛みのある部位と左右対称部位へ刺激する(左右対称原理)、痛みのある部位の裏へ刺激する(表裏同様原則)、痛みのある部位の斜めを刺激する(斜め刺激)……などなど、反射学の考えを応用した様々な原則をクラスで学びます。

 

ツボへの刺激

顔面の皮膚を探り、痛みを感じるツボは、弱まりのある部分として“生きたツボ”と呼びます。 この生きたツボを素早く軽く押したり、掻いたり、30秒くらい押したり、円を描くように回したりすることで、ツボを開通させます。

他に、反射学を利用した“BQA(ブイ・クオック・チャウ)のツボ”があります。これは、例えば肝臓は50番というように、住所のあるツボで、場所を特定することができるものです。

コースのテキストには、様々な症状に対応するツボのフォーミュラが、レシピとして紹介されています。胃痛、頭痛、湿疹、体力衰弱、気を上昇させるフォーミュラ、気を下降させるフォーミュラ、調和フォーミュラ、陰血補足フォーミュラ、等々。

授業中も、様々な器官に対応するツボのナンバーが、次々と発表されます。

 

顔のツボに対して、日本のサロンパスを貼る方法もあります。
クラスではまず、多くの症状に適用される重要な4つのツボに対して、4mm×4mmに切ったサロンパスを貼る練習をしました。

他に、反射学を利用した“BQA(ブイ・クオック・チャウ)のツボ”があります。これは、例えば肝臓は50番というように、住所のあるツボで、場所を特定することができるものです。

コースのテキストには、様々な症状に対応するツボのフォーミュラが、レシピとして紹介されています。 胃痛、頭痛、湿疹、体力衰弱、気を上昇させるフォーミュラ、気を下降させるフォーミュラ、調和フォーミュラ、陰血補足フォーミュラ、等々。

授業中も、様々な器官に対応するツボのナンバーが、次々と発表されます。
この4つのツボは、プロフェッサーによると「沢山の病気に対応して戦う、4人の侍」なのだそう。慣れたところで、顔中心部に存在する各臓器のツボ、その後、額に存在する各臓器のツボに、サロンパスを貼る練習をしました。サロンパスをつけていて、一番熱いと感じるのが原因となる臓器。この方法が病気の原因を探す最も簡単なやり方なのだそうです。

プロフェッサーからは、この小さく切ったサロンパスを、顔に“美しく”貼るよう、指導されます。

他にないディエンチャンの素晴らしさ

私が感じた、ディエンチャンの他にはない素晴らしさとは……

結果が即時にのぞめる

第一に“即効性が望める”ことです。

今回のクラスでも、生徒さんが今現在訴える腹痛、喉の痛み、眼振、鼻のつまり……などなど、目の前でプロフェッサーとイエン先生がその場で改善してしまいました。まさにマジック!いえいえ、これがディエンチャン。

従来の自然療法では、自分の身体から起こる自然治癒力を引き起こす為、ある程度時間が掛かる、というのが常識でした。ところが、ディエンチャンではものの数分で、症状緩和を実感できるのです。もしまた症状がぶり返したら、別のチャート、別の道具を試していきます。私は今まで様々なリフレクソロジー、ゾーンセラピーを経験してきましたが、ここまで早い即効性は初めてです。

多くの日本人クライアントは、一回のトリートメントで結果を求めてきます。トリートメント後に自身からわきおこる反応を見るまで、ある程度の時間をいただきたいという説明は、ヨーロッパのようには通じないことが多いのです。

ディエンチャンは、鍼のような痛みや怖さもなく、素早く確かな結果がほしい日本人にぴったりの療法だと思います。

 

シンプル

他にない素晴らしさ、第二に“シンプルである”ことです。 実際のところ、ディエンチャンのレベルは9まであり、西洋医学や東洋医学の知識、病気の原因、ツボの知識、陰と陽を考え合わせるなど、とても簡単というわけではありません。

しかし、プロフェッサーもおっしゃっていましたが、「医学を学ぶのに6年間、鍼灸を学ぶのに3年間掛かるのに、ディエンチャンは2日学んだだけでも、すぐに結果をみることが可能」です。クラスでは、お子さんが自分で道具を選んで、ディエンチャンを試した、という報告もありましたが、子供でも出来てしまいます。

また、ディエンチャンにはこうしなければならないというルールがありません。“自由自在”の考え方です。「もしこれが合わなければ他を使えばよい、シンプルである」とプロフェッサーから教わります。 何よりそういったリラックスの気持ちでクライアントに向き合うことが大事で、リラックスは陰と陽のバランスが取れている状態なのだそうです。

「壁にぶつかったら、よければよい。空いている道を行けばよい。一つのところに留まらず、空いている道を探すこと。」
プロフェッサーのこういった考えが、ディエンチャンには反映されています。

 

楽しい!

他にない素晴らしさ、第三に、“楽しい!”ことだと思います。

生徒さんも授業中に、プロフェッサーの講義を聞きながら、ディエンチャンの道具を自然に手に取り、ご自分の顔を思い思いに刺激していたり。道具に興味を持ったご家族やクライアントが、自らディエンチャンの道具を選び、自分の顔を刺激した、というクラス内の発表もありました。
(ただし、道具は薬のようなもの。楽しいからといって、刺激のしすぎ、使いすぎないように!と注意がありました。)

健康を強化するための起床時に行う顔のマッサージ方法や、様々な効果がのぞめるリンパ系反射に対する顔の線引き方法、二日酔いを覚ますツボ、愛情のツボ、緊張やストレスを鎮めるツボ、記憶力のツボ、うるさい相手を黙らせるツボ、なんてユニークな対処法やセルフケアは、他では決して教えてもらえません。

詳しいレシピやナンバーは、コースに来てからのお楽しみです!

応用範囲が広い

どの療法より短時間で済むため、様々な適応、応用が可能、どのような自然療法とも組み合わせが可能です。ボディーワークを伴わない療法を専門とされる方にも、おすすめではないかと思います。

私の経験からも、プロフェッサーのチャートや道具を見るとどんな人も必ず「何これ?!どうやるの?」と釘付けです。ご自身の専門とする療法の後に、ディエンチャンを加えれば、その確実性からもクライアントに対するカスタマーサービスの向上間違いなし!です。

プロフェッサーの教え

この講座は、単にテクニックを教わるだけに終わりません。

プロフェッサーはディエンチャンを、越(ベトナム=越南)医道と呼びます。日本の剣道、華道、茶道のように、ディエンチャンにはテクニックを越えた奥の教えが、多く隠されています。経済大国でありながらストレスあふれる日本に、それを一番伝えたいのだと先生はおっしゃいます。

  • ディエンチャンが目指すのは、真‐正しく真実の道を歩む、善‐人に役立つように生きる、美‐美しく生きる(生き方も含め)。
  • ディエンチャンによって、技術だけでなく、精神や性格も磨くこと。プロフェッサーが一番伝えたい事は心であり、心から出発しなければ大きなこと、おもしろいことができない。
  • 心は家の土台で、レンガや壁は知識と才能。心があって知識を生み出す。心がきれいなら知識と大きな仕事を自然に生み出す。
  • ディエンチャンは、心のきれいを目指している。ディエンチャンの技術で人を手伝い、人を救う。そういった親切な心を育てる。もちろん、顔もきれいになる。
  • 社会に貢献すること。一度の人生、どうやって社会に役立つか考えること、人生の方向性を決めること、目標を立てて生きること。目標がないのは、大きな船にドライバーがいないのと同じ。

いかがですか?もっと素敵な言葉や教えもありましたが、あとはプロフェッサーに会いにいらしてくださいね。ユークリッド幾何学からフラクタル構造、般若心経から孔子、老子の教えまで、とても深いのです。キストテキストテキストテキストテキスト

プロフェッサーのクラス

プロフェッサーと初めてお会いした私の第一印象は「ベトナムの国旗みたいに明るくて華やか」。次の瞬間には「わぁーっはっはー!」と大きな笑い声。そうそう、これがアジアのエネルギー、と嬉しくなります。

私はまだ行った事のないベトナムですが、東南アジアの熱気とフレンチコロニアルの融合、バイクのあふれるほこりっぽい街の喧騒、南シナへ通じる茶色のメコン川……濃密なアジアの匂いや騒音まで、頭の中で妄想がどんどん広がります。同時に、この国の複雑な歴史とプロフェッサーの笑顔が重なったのです。

ベトナムは紀元前から約1000年間中国に支配され、19世紀末から約100年にわたりフランスに統治され、1960年から1975年までベトナム戦争があり、常に被征服の歴史を持ちます。植民地時代にはフランスから激しい搾取にあい、自国にとって都合の良い農業や産業しかベトナムに発展させず、ベトナム戦争では国土の破壊、生きていく為に必要な学校、農地、工場なども失われ、本来豊かな国であるはずのベトナムの発展が妨げられてしまいました。

政治的にも1976年社会主義国となったものの、貧困化から採択されたドイモイ(刷新)政策により、市場経済の導入や対外開放が進められた陰で、大きな貧富格差が生まれてしまいました。国家予算の多くが都市部への経済投資につぎ込まれ、子供や高齢者、障害者など弱い立場にある人々への対策は遅れているようです。

このような国の歴史の中で、自分の技術で国家の役に立つこと、人々が幸せに暮らせること、病人の痛みや苦しみを確かに救いたいと願った、プロフェッサーの熱意と技術の集結、最も効果のあった顔への反射学がディエンチャンです。この療法がいかにパワフルで、確実な効果がのぞめるかは、疑う余地もないでしょう。ヨーロッパでもチャウ先生の名前が知られているのは、この真摯な姿勢が西洋の人々にも伝わるからではないかと思いました。

そういったチャウ先生ですから、生徒それぞれの抱える病気や症状を聞き、その場でツボのナンバーを教えてくれたり、棒のお灸など様々な対処方法を、親身に授けてくれます。休み時間は、トリートメントルームに早がわり。生徒の体調をいつも心にかけてくださるのです。家族や友人を連れてきても良く、それぞれの抱える悩みに対し、一人ひとり丁寧にトリートメント対応してくださいました。

プロフェッサーはまさにこういった、隣人に対する熱心な思いやりや愛を表すことを、日本に伝えたいのではないかと思いました。

 

結び

日本での初開講に際し、コース・ディレクションを務めた冨野玲子先生は、高校生の時既に、直感で自身の未来を見据えていたのかもしれません。

大学案内書をめくっていたその目に「すぐ“ベトナム”の文字が入ってきて、ぴんと来た!」その後、ベトナム語学科在学中にベトナム留学、就職先でもベトナム担当。冨野先生とベトナムを切り離すことが出来ないくらい、その関係は大変深いものになりました。

しかし、その後会社を退職、一転、自然療法の世界へ。大学の同級生達が何らかベトナムに携わる仕事を続けるのを見ながら、「もうベトナムに関わる事はないだろう。」……そう思っていたそうです。

人生の道筋は、どこで分岐/交差し、その果てにどこへと人を導くのでしょうか。一度は離れた縁の欠片を、冨野先生は、また再び歩き出した別の道で発見したようです。あれからずいぶん月日が経った2010年12月。ベトナムを第二の故郷と呼ぶ冨野先生と、日本にもディエンチャンを広めたいと長年願っていた創始者プロフェッサー・チャウとの夢の饗宴が、ここIMSIで実現したのですから。

冨野先生が一生を決めた自然療法という専門分野で、ベトナムと日本との架け橋になる日がやってきたこと。それは、冨野先生と長年の同僚である私自身にとっても、嬉しいことでした。高校生で感じた直感から現在、ベトナムの知恵を日本に伝える大きなプロジェクトを担った冨野先生。「ディエンチャンには、日本人に教えたいことが沢山つまっている」と言います。

一方プロフェッサー・チャウは、1965年法科大学で早稲田大学の留学生と交流し、その頃から日本に親しみを持ち、日本人を尊敬していたそうです。今回アジア初のコース開講を日本に選び、「私の力の範囲内で、日本人を助けたい」とおっしゃいます。

二人は長い期間かけてお互いの夢を熟成させ、二国間を幸福・健康・知恵をもたらすコースで結び付けてくれました。

 

複雑な歴史の中でも、たくましく底抜けに明るく生きているベトナムから生まれた療法。プロフェッサーの心から生まれた反射区チャート、心から生まれた道具。是非一人でも多くの方に学んでいただき、体験していただきたいと思います。

今回、このコースに参加させていただき、“反射学の力で多くの人々の苦しみを和らげ、希望を与えてきた”チャウ先生にお会いし、反射療法の勉強をしてきた私は、改めて勇気をもらいました。 新たに加わったディエンチャンの教えを持ち、私も自分の進んできた道を大切に歩み続けたいと思います。

そして、チャウ先生と冨野先生のように、夢を持ち続け、人のためになれるように……そう感じています。

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