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●ニューロフットリフレクソロジーアドバンスコース「脳へのアプローチ」●
2010年(飯野由佳子)

台風9号の来襲と歴史的猛暑が続く9月真只中、ロネ・ソレンセンが来日しました。もちろん日本にまた新たな旋風を起こすため! フェイシャルリフレクソロジーコース以外のロネ・ソレンセンメソッドも、徐々に日本に参入しています。2010年3月にスタートした“ニューロフットリフレクソロジー(ベーシック)”に引き続き、今回アドバンスコースとして“脳へのアプローチコース第一期”が開催されました。

 

脳反射区アプローチとの出会い

足の脳反射区に対するアプローチ。実はこのテーマに、強い思い入れがありました。私自身、最も学びたいと思っていた講座だったのです。リフレクソロジーの勉強を始めた10年以上前、“脳の反射区=親指の裏ふくらみ全体、または10本の足指裏全体。前頭葉の反射区=親指のふくらみ上、側頭葉の反射区=親指脇。”と教わりました。

トリートメントを始めた当初はそれで満足していましたが、その後、様々なクライアントを多方面から分析するにあたり、脳内器官それぞれの反射区を知りたいという気持ちになったのです。そして英語検索でようやくたどり着いたのが、脳の反射区を詳細に足指に描き出し、患者に対して足のリフレクソロジーアプローチをしている、バルセロナ在住のマンサナレスという医師がいるらしい、ということ。2003年でした。

Dr.ヘスース・マンサナレス

2004年バルセロナでのクラス風景

バルセロナにてロネ・ソレンセンと

次にスペインの検索サイトから彼を探しましたが、ドクター自身のサイトはなく、他も写真や足のチャートが出てこないため、それらしい情報は得られませんでした。マンサナレスという若手闘牛士のHPにぶち当たり、数々の美しい写真を、ほれぼれと見入るに終わる始末。

探しているマンサナレスにはなかなか出会えなかったのです。でもこの頃から、バルセロナとご縁があったのかもしれません。

2004年1月に、フェイシャルリフレクソロジーを学びにバルセロナへ行くことが決まり、まだお会いしたことのないロネという先生に、マンサナレスのことを聞いてみようと思いました。そして答えをくれたのが、ロネ・ソレンセンその人だったのです。

ロネはマンサナレスのテキスト、彼の足指チャートを私に見せてくれました。

残念ながらスペイン語で、何が書かれているのか理解できませんでしたが、その時の感激は今でも鮮明に覚えています。

数多くのチャートが全てドクターによる手書き、そのあまりの詳細さは「レオナルド・ダヴィンチの素描みたい!」そんな気持ちがしたものです。

しかし、ロネによる脳の反射を投影させたフットリフレクソロジー理論は、それよりもっと深いものだったのです。

 

脳へのアプローチとは

このアドバンスコースは、脳に関連した疾患に対応できるリフレクソロジーです。全ての身体器官を支配するのは脳。脳は身体の中で一番重要な臓器であり、脳を健やかに保つことは臓器を健やかに保つことにもなるのです。しかし、その脳に関連した疾患をもたらす原因となった、心理的トラウマへの働きかけを一番に行います。大変ユニークだと言えるでしょう。心理的トラウマを足から探った後、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、脳幹、小脳の反射区位置、大脳皮質39の機能区分に対する反射区、大脳皮質と脳神経に関する理論などを学びます。

ロネによると、各国共通してこのコースの参加者は、一般的に難しいとされる疾患を持つクライアントを抱えるリフレクソロジストが多いそうです。がん、脳卒中、多発性硬化症、自閉症、行動障害、学習障害、うつ、痴呆、リハビリテーション等に大変有効なリフレクソロジーで、従来到達できなかった箇所へのアプローチができるでしょう。脳卒中を患った後に伴う運動機能障害や言語障害、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などに対する不具合、顔面まひ、三叉神経痛、その他脳神経にまつわる障害にも対応が可能です。

ロネ曰く、「このテクニックなくして、今までの結果は得られない」とのこと。また、顔のリフレクソロジーと足のリフレクソロジーの組み合わせは、バイポーラ(双極)の刺激となり、大変効果が上がります。ロネのインスティテュートでは、80%以上がフェイシャルリフレクソロジーとニューロフットリフレクソロジーの組み合わせを行っているそうです。

心理的トラウマへのトリートメント

脳に関連する疾患に働きかけるのは、あくまでもクライアントの「症状」に対する働きかけ。もちろん今出ている身体症状に働きかけることは重要ですが、その疾患を生み出した「根本原因」に働きかけるのが、ロネ・ソレンセン流です。(フェイシャルリフレクソロジーも原因の追究を基本にしていますね。)

病気は事故、先天性、遺伝子異常などによるものも考えられますが、85-90%は感情の乱れが原因といわれます。心理的ショックは身体に刻み込まれ、生化学反応を起こすため、足にトラウマのディポジットができます。足の脊椎反射区にふんわりしたディポジットができ、これも神経を圧迫します。それをそのままにしておけば、何年もかけて徐々に神経への圧迫を強めます。気付かないうちに臓器に対する神経伝達が弱まり、これが病気につながると考えられます。

またそれは性格にも影響してきます。ですので、生まれてから現在までに受けた最も大きな心理的トラウマの年齢を探り、トリートメントで開放をし、根本原因からアプローチをしていきます。ニューロフットベーシックでほんの少し触れたトラウマのディポジット探しを、このコースでは技術を確かにし、理論も深く掘り下げます。

24個の椎骨と仙骨それぞれに対応する感情があり、トラウマをそのままにしていると、それぞれの椎骨に対応する感情が生じてきます。もし足のサインをトリートメントせず、そのまま持ち越すと、それぞれの椎骨に対応した身体症状が現れます。

例えば、心理的トラウマのディポジットが頚椎1にあったとします。ロネのテキストにはチャートがあり、頚椎1の神経支配する器官は脳下垂体、内耳等です。

この頚椎1から影響する感情は恐れ、混乱。これをそのままにしておくと、身体症状として頭痛、不眠、高血圧、めまい等の症状が出てくる、となります。頚椎1の損傷でむちうち、頭蓋の筋緊張が起こり、心理的衝撃を受け、ディポジットが生じ、恐れが出て、頭痛が出る・・・という具合です。ディポジットによって感情と身体症状が同時に出てくることもあり得ます。

逆に、身体症状から心理的トラウマの年齢を探ることもできます。例えば、喘息の身体症状が出ているクライアントがいたとしたら、ロネのテキストで喘息は胸椎1と関わっており、足に心理的トラウマのディポジットが胸椎1にあるかを確認することもできます。

ここでロネが強調していたのは、クライアントの過去が知りたいのではなく、どんなことが起こったのかが重要なのでもなく、今持っている症状を引き起こした原因に働きかけ、心理的トラウマを開放する。それによって心と身体が変わることにつながる、ということです。クライアントが自分の心理的トラウマに向き合うことが必要なのです。つらい作業かもしれませんが、意識したり、受け入れることで、身体症状の改善速度が速くなる、とロネは教えてくれました。性格もトリートメントによって戻ってくるそうです。ニューロフットベーシックと同じ位、このアプローチは重要と考えます。心理的トラウマのディポジットが無くなって初めて、病気の完治と言えるのです。

脳反射区へのトリートメント

親指に反射されている脳の反射区

その反射区を細かく探っていきます

ニューロフットベーシックと心理的トラウマへのアプローチが、フェイシャルリフレクソロジーの7ステップにあたります。心理的ディポジットに働きかけた後は、いよいよ症状、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の反射区を探ります。

足の親指を細かくさぐり、それぞれの葉のディポジットを探していきます。これを“スキャンする”とこのコースで呼びます。つまり、様々な方向からX線撮影し、物体内部の構造を調べるCTスキャンを掛けるように、手で脳反射部位を感じ取っていくのです。この時、しっかりクライアントの指の奥まで圧をかけ、密着して行います。徹底的に探りディポジットのグレードを見極めることで、症状の重さ、表に出ていなけれど機能低下している部位が分かってきます。

これこそリフレクソロジストの腕の見せ所。「医療のスキャンではそこまでわからなくても、私達は足から疾患のグレードがわかる。」とロネは誇らしげに言っていました。

神経反射のマップは全てマイクロマップと呼びますが、実はこの親指のマップが一番細かいものになります。ですので、神経を集中していかに感じ取るか。ここが難しくなります。そして見つけたディポジットから、いかにその情報を使うか。それはセラピストの判断に任されます。なかなか挑戦しがいがありますよね!

今回のクラスでも実技になると、始めは「難しい!」という声があちこちから上がっていましたが、ロネから「指を敏感にするように練習してください。というか、それしかありません!」と声を掛けられ、俄然集中度を増して練習されていました。その後は皆さん、みるみるうちに上達。相モデル同士でコミュニケーションを取り合い、最後はご自分の技術にされていました。大変心強い第一期生の皆様、お疲れさまでした!!

 

ディポジットに関してですが、「脳反射区に滞りがある」と言われたら、クライアントは少し不安になってしまうかもしれません。

後頭葉が悪い?脳幹に問題がある?決してそうではありません。血液が十分に届きにくい状態にあり、それをそのままにしておくことで不調につながる可能性がある、と考えたらよいでしょう。もし既に脳内に梗塞や疾患を患っている場合には、ディポジットのグレードが高くなり、固さや大きさが異なってきます。

脳反射区のスキャンの後、ディポジットのあった葉へ、脳の強化トリートメントやバランシングを入れていきます。これらのテクニックにより、トラウマの開放、ディポジットのあった脳エリアの強化と疾患予防、症状緩和へつながっていきます。

これは反射学だからこそ、できること。大脳皮質の各葉へ刺激を送るのはなかなか難しいですし、脳各部の詳細な反射の知識を持っているリフレクソロジストも多くはないはず。是非是非ロネの世界へいらしてください!

ロネによる脳に関する理論講座風景

この足から得られる情報を全て、フェイシャルリフレクソロジーのトリートメントに取り入れることができます。もし、足の後頭葉反射区にディポジットがあるならば、フェイシャルリフレクソロジーで、オレンジの経絡、三焦経、心包経へのアプローチを考え合わせていきます。施術に慣れれば、ベーシックと合わせても15分程度でトリートメントを締めくくることができ、フェイシャルリフレクソロジーと合わせて60分のメニューを組むことができます。

クラスでは、ロネのデンマークやスペインでの症例も多く紹介されましたが、2名の生徒さんが今まであげた症例を紹介してくださいました。今までどのようなアディショナルツールを使用したか、それに対してロネから今後新たに追加するツールのアドバイスも発表されました。こういった情報の共有もアドバンスコースの醍醐味。学んだ基礎をどんどん応用し、広げていくことができるのが、ロネ・ソレンセンのコースの特徴だと思います。 またニューロフットリフレクソロジーもフェイシャルリフレクソロジーも、未病、予防につながるのが素晴らしいところです。

子供の頃からトリートメントを受けていると、将来出てくる病気の予防になり、もし大きなトラウマがなくても、身体の浄化が予防につながります。子供に限らず大人であっても、病気が重度になる前に身体を調整し、改善させていくことができます。ロネが今年中国を訪れた際、中国でも現代医療にシフトされつつあるけれど、やはり予防に立ち返ろうという姿勢に戻ってきている、と聞いたそうです。日本では、病気の予防に対する考えがあまり浸透していないように思いますが、私達補完療法士が最も得意とする分野として、今後大いに呼びかけが必要になってくると思います。

結び

詳細な脳反射区の場所を知りたいとロネに伝えた時、「それは症状に対する働きかけで、表面的なことである」と彼女からまず言われました。原因が隠れている心理的トラウマ、それによって影響された現在の性格、マイクロマップのディポジットに対応する脳神経まで、足が沢山の情報を語りかけてくれることを、ロネが改めて教えてくれました。

身体の器官は全て脳が支配しています。それだけでなく、自分の成長のため、夢を実現させてくれるのも脳の働きによります。自分がものにした知識を使い、夢への道筋を考え、実現した姿を想像する。人とのコミュニケーションを十分とり、人の気持ちを理解しながら、自分の考えを伝え、夢への一歩に近づく。図らずも「足の“脳”反射区が知りたい」とスタートした私の夢は、紆余曲折しながら叶えることができました。

ロネと共に私も実技指導にあたります

このリフレクソロジーは、脳への刺激をターゲットとし、脳の各葉を強化していきます。リフレクソロジストの指で、クライアント(難しい局面にいる方やもちろんそうでない方も)の足指を刺激することがきっかけとなり、彼らの夢への第一歩を踏み出すお手伝いができるかもしれません。少しでも多くの方に、そんな幸せをお届けできるようなリフレクソロジストになっていきたいと思っています。

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