SEMINARS & EVENTS

●ガブリエル・モージェイ氏来日セミナー●
「アロマセラピー・ダイナミクス・サーティフィケートコース」開催報告
2014年(矢野こずえ)

続けて大型台風が日本列島を直撃した2014年の秋。ガブリエル・モージェイ氏の来日スケジュールはまさに本州上陸の日で、無事に来日できるのか気をもんでいました。影響無く日本入りすることができたとの連絡を受けてひと安心。京都・奈良などで充電して3日間の講座に臨んでいただきました。

「日本のアロマセラピストに、もっと精油について知ってほしい!!」というガブリエル先生の熱い想いが込められた今回のコース。

北は北海道から南は奄美大島まで、全国から受講生に集まっていただきました。

2014年10月17日から19日まで3日間に渡って開催された、ガブリエル・モージェイ氏来日セミナー「アロマセラピー・ダイナミクス・サーティフィケートコース」の模様をお伝えいたします。

初日は、ガブリエル先生の京都・奈良旅行の楽しい写真を見ながらスタートしました。

その中でもガブリエル先生が興奮してお話してくれたのは「ヒノキ」の写真。日本にある木なので私たちにとってはお馴染みですが、ガブリエル先生は「こんなに近くで撮れたんだよ!」と嬉しそうに何カットも写真を見せてくれました。

身近にあるとそれほど意識しなくなってしまいがちですが、精油だけではなく、原料となる植物にも愛情を持って楽しんでいらっしゃる姿を拝見して、改めて植物自体にも目を向けていきたいなと思った出来事でした。

熱く語るガブリエル・モージェイ氏

熱心に聞き入る受講生

そして、いよいよ講座に入ります。

2014年は、「精油を東洋医学の観点から紹介する」ということで、60種類の精油が並んだ186ページに及ぶテキストが用意されました。精油一つ一つの解説の前に、東洋医学に基づいた精油の考え方の基本を、東西の考え方の違いにも触れながら進めていきました。

五臓が非常に重要で、五臓はそれぞれに心理的な面をもっています。

例えば、五臓の一つである「肺」は「魄(はく)=スピリットの住処」です。五臓はエネルギー的な観点からも重要で、「エネルギー」は、生命、あるいは活力の源と考えます。「VITAL」は生命の本質的なもの、と解釈し「VITAL ENERGY」は活力、日本でいうところの「気」であり、物質的な面、つまり肉体や身体機能に及ぼす力があるのです。

「VITAL ENERGY」は5つあります。
「Ki=気」
「Blood=血」
「Body Fluids=水」
「Essence=遺伝的エネルギー、精」
「Shen=神-心」の5つです。

「神」は注意が必要で、西洋では、「spirit」というと少し意味合いが違ってくるそうです。「神」は意識、考えること、感じることを含めた意識のあらゆる部分のことであり、より大きな視点で見ていくことを「spirit」の意味として認識しているそうです。

東洋医学では、五臓は心理的側面と身体的側面が合わさって捉えられています。心理的役割、生物学的役割、科学的役割が全体としてまとまった役割をもつ精油もまた、一つだけではなく、心理的側面と身体的側面が絡み合って作用していきます。東洋医学的な考え方を取り入れて精油を選ぶことは、相乗効果が大きいことが理解できます。

一方で、精油を科学的な面から勉強することも役に立ちます。この5年ほどで精油の優れた研究結果が出ていて、その中でも東洋の視点を強調しているのです。

例えば、ローズオットーの研究では、皮膚から水分が奪われるのを防ぐ作用があり、匂いを嗅いだだけでその作用があることがわかりました。ローズオットーは、東洋医学的な視点から見ると陰の精油ですから冷ます作用があり、肌の水分保持という作用があるのは納得できます。東洋医学的見地から付け加えると、ローズオットーは不安解消の役目も果たします。不安は陰の気の不足によって起こりますので、陰の不足によく働くといわれるローズオットーは、不安解消にもまた役立つのです。

このように、東洋医学は科学と分離したものではないのでいろいろな精油の調査結果を見ることは、東洋医学的な作用を理解することにもつながっているのです。ただ、現状ではよく研究されている精油とそうでない精油があります。ラベンダー、ローズ、ティートゥリーは研究が多くされている精油です。「アロマセラピーで一般的でなくても重要な精油は研究されるべきだ」と、ガブリエル先生はおっしゃっていました。

精油を東洋医学的な見方で捉えていくときに、陰陽を考えることも重要です。どの精油にも陰陽の要素があります。精油には、身体的に働く面と心理的に働く面があるからです。また、精油は神経システムと強いつながりがあります。精油自体は、他の植物性の薬と比較して陽の要素が強いという特徴があります。

これは、精油の蒸留方法をご存知の方ならわかりやすいと思います。精油を蒸留するときには、冷却後には下に芳香蒸留水が、その上に精油が抽出されますね。芳香蒸留水が「水」で下にあり「陰」なのに対し、精油は水と分離して、水より軽く上に浮くので「陽」となります。揮発性があって拡散するというのも「陽」の特徴です。「陽」には集中するという特性があるため、希釈が必要になる、という説明もとてもわかりやすいですね。

精油の生産現場を考えても、ローズを1滴使用するということはローズ畑の一角分のローズを使用するのと同じことだと考えると、使用する際には希釈する必要があることが納得できますね。このように、東洋医学的な考え方を持っていると、精油を理解するのにも役に立ちます。

精油は、気に強い作用を及ぼすことがわかっています。一つは、気を強壮する(=気を集める)作用があります。特に、精神的に気を上げる作用があることが、研究でわかっています。もう一つは、気を調整する(=動かす)作用があります。気が十分にあるけど動かない状態では緊張が高まり、痛みとして感じられます。このような気の停滞に対して、体のサイクルやバランスを整える作用があります。もう一つ、気を静めて散らす作用もあります。

このように、東西の考え方の違いや最新の研究結果を交えながら、わかりやすく東洋医学的な精油の見方の基本を解説してくださいました。ガブリエル・モージェイ氏の著書『スピリットとアロマセラピー』でも東洋医学的な視点から解説されていますが、やはり直接お話を聞くと更に内容が飲み込みやすくなります。最新の情報やわかりやすいたとえ話もあり、あっという間に時間が過ぎて、まだまだいろいろお話を聞きたいところでした。この後に続く60種の精油についての解説にも期待が高まります。

 

ガブリエル・モージェイ先生著
『スピリットとアロマテラピー』

質問も活発に出されました

精油の解説は、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の五臓のグループに分けられていて、「肺」のグループから始まりました。「心」は体の皇帝であり、「肺」は体の大臣で、「王」である「心」のそばに立って、呼吸を極めるのです。中国語、サンスクリット語、ナバホ語など、国は違えど「肺」という単語が「呼吸」や「生命」といった意味を持っているというのは、興味深いお話でした。

そして、肺の機能についての解説に続きます。肺の第一の機能は、気を司ることです。呼吸を通じて大気から「天の気」を取り込み、「地の気」と統合して営気と衛気を形成するのです。

第二の機能は、気の散布と降下をコントロールします。生成した気を、経絡を通じて巡らせ、腎と大腸に降下させるのです。
第三の機能は、経絡と血管をコントロールすること。
第四の機能は、水の通り道を調整すること。
第五の機能は、皮膚と体毛をコントロールすること。
第六の機能は鼻に開口すること。
第七の機能は、魄(はく)の住処であること。
魄は感覚を滋養します。味覚、触覚、聴覚などの感覚は、魄の食べ物となるのです。日本の文化はお香や微妙な食べ物の違いが分かるなど感覚的なものを持っていて、魄を大切にする文化だとガブリエル先生はおっしゃいます。日本でアロマセラピーが盛んなのも日本文化が関わっていて、過去10年間で日本でアロマセラピーの優れた研究がなされているそうです。一方、現代の生活では見る(=木)、分析する(=土)、聞く(=水)に重きが置かれて、魄は簡単に失われています。アロマセラピーに関心を持つということは、魄を取り戻すということでもあるのです。機能を考える時は、同時に機能しない時についても考えるのだとガブリエル先生はおっしゃっていました。

 

60種の精油を詳しく解説

次に、肺の不調によっておこる肺気虚の兆候と症状、また肺気虚が見られる時に使用する精油の解説がありました。肺気虚では倦怠感、息切れや呼吸困難、免疫力低下などが見られます。こういった症状が見られた時には、ブラックスプルース、ヒソップ、ローレルなどを使用するそうです。

続いて、肺気虚の時に使用する芳香エネルギーについて解説がありました。回復、開放、活性化、浄化の作用があるコニファー調のエネルギーがある精油としてスコッチパインとブラックスプルース、刺激、活力、浄化、活力を与える作用があるカンファー調のエネルギーがある精油としてスパニッシュセージが挙げられていました。

このような解説が五臓ごとに詳細になされ、3日間で60種類の精油についての東洋医学的視点を学ぶことが出来ました。最後には、急ぎ足になりましたがケーススタディを12問解き、総まとめとしてより理解が深まりました。

長年精油に携わっているガブリエル先生ですが、解説する精油の蓋を開封するたびに嗅いでは感動する姿に、こういった新鮮な気持ちでずっと精油に関わっていきたいと、その姿勢も学ばせていただきました。

 

精油の蓋を開けて香りを確かめる

精油の香りを嗅ぎながら説明を聞きます

また、精油を多角的に研究されているガブリエル先生のお話は幅広く、古代ではどういう使われ方をしていたのか、とか、そこから考えられる精油が持つ象徴的な意味など、まだまだガブリエル先生から学びたいことは尽きないなと感じました。

そのガブリエル先生の、次回の来日が決定しました!
今回は、精神面・感情面に深くアプローチする、実技付きの指導だそうです。

本場英国でもなかなか見られないガブリエル先生の実技指導、とっても楽しみですね!

 
 
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