SEMINARS & EVENTS

●ガブリエル・モージェイ来日セミナー 開催報告
「スピリットの調和とアロマセラピー」2016年●
IMSI講師 鈴木 希

セミナー風景

2016年2月12日から3日間、ロンドンにあるアロマセラピースクールITHMA校長ガブリエル・モージェイ先生が来日され、IMSI主催の来日セミナーを開催しました。毎年、情熱的な講義で受講生を惹きつけて離さないガブリエル先生。今年もテーマにふさわしく、熱くて深い、スピリットが動かされるような素晴らしいセミナーとなりました。感情と精神に対してアロマセラピーをどのように捉えて活用していくべきかを学び、さらに陰陽五行の考え方に根差した精油ブレンドを使ったトリートメント実習も行われ、アロマセラピーの奥深さを改めて学ぶことができました。

 

●スピリットとアロマセラピー

セミナーテキスト

セミナーのテーマは、「スピリットの調和とアロマセラピー」です。精油のこと、その種類や産地、成分や作用など、関わり始めると、とても奥が深いアロマセラピーの世界ですが、ガブリエル先生の視点もまた、精油の奥深さを改めて感じさせるものです。

嗅覚は、現代に生きる私たちが想像する以上に、たくさんの情報を得て、実は重大な気づきを与えてくれる感覚です。情動的な感情を左右し、記憶と繋がったり、物の好みを決定付けたりします。

絵を見たり、音楽を聴いたり、何か芸術に触れた時、感覚と感情が重なり、人はそれぞれの感性が働いて、感動したり、涙が出たりしますが、精油を嗅いだ時も、同じように感性が働きます。目には見えず、音もない世界で、なかなか言葉で表現することが難しい嗅覚の世界。

感性を通じて、いかに精油が人の心と身体に働きかけていくのかについては、先生の書かれた本「スピリットとアロマセラピー」にもとても細かく記されていますが、実際にお話をお聞きすると、精油から届けられる香りは、私たちにとって宝物であることに気づきます。

精油を嗅いだ時の感情、心や体の変化を、たくさんの表現を駆使して説明してくれるのがガブリエル先生です(あくまで私の考えです)。たった1つの精油でも様々な素晴らしい感動を与えることができますが、ひとつひとつがどんなに素晴らしい精油で、どういう精油のブレンドをすることが一番良いのか、それはアロマセラピストの腕に委ねられます。アロマセラピストは精油のもつ特徴を捉え、クライアントの様々な感情に合わせて精油を選んでいく必要があります。ガブリエル先生は、香りが心にはたらきかける感覚を表現豊かな言葉で伝えてくれるため、精油を選択していくうえでの素晴らしいヒントを与えてくれます。

 

●アロマセラピー×東洋医学

陰陽五行と精油

日本人だからといって、昔は東洋医学が日本の医学だったからといって、普段「気」という漢字は様々な単語に使われているからといって、日本の四季折々のイベントが東洋医学の考え方と深く関わっているからといって、何気なく使い過ぎて深く学んだことがない東洋医学。私もロンドンでガブリエル先生から初めて東洋医学の考え方を、しかも英語で学びました。英語だからなおさら理解が遅くて、はじめのうちはずいぶん苦労しました。しかし、とても身近なものなのだと気づいてからは学ぶことが楽しくなり、なぜ今まで知らなかったのだろうと思うことばかり。難しく感じるのは始めだけです。西洋の人が理解するよりも容易いことなのです。

様々な環境に適応するために、身体だけでなく、心のバランスを保つことはとても重要なこと。心のバランスが崩れたときの影響は、その人の性格を変え、身体の不調につながっていきます。どんな精油で心へアプローチできるのかは、

精油ひとつひとつ、香りの個性を見つめていくこと、
人間ひとりひとりの個性を見つめていくこと、

両方が必要になります。
この両方を理解する手段として東洋医学を取り入れていきます。
だからこそ、東洋医学を日本人アロマセラピストにお勧めしたいです。

 

日本語版スピリットとアロマセラピー

今回の来日セミナーでは、陰陽五行の考え方を学び、精油の特徴を東洋医学の視点で捉えていきます。
大前提として、陰陽とは?五行説とは?季節の捉え方や人間の体質を勉強していきます。でも教えてくださるのはイギリスから来てくださった先生です。なんだか始めは不思議な気分ですね。でも授業が始まって、先生が語り始めると、アロマセラピストとしても、鍼、指圧師としても、豊富なその知識で受講生を惹きつけていきます。

アロマセラピーは、たくさんの精油の中から、クライアントの心身の体調に合わせて精油を選んでいきますが、一番大切なのは、ホリスティックに見ていくということ。東洋医学も同じです。

精油を選ぶとき、分かりやすく言えば、リラックスしたいのか、活力が欲しいのか。東洋医学で考えれば、陰の傾向が強いのか陽の傾向が強いのか・・・・・・(実際はもう少し細かいですが)。同じ考え方で見ていくことができます。精油を選ぶときに陰陽五行を知っていると、人の特徴と精油の特徴を結びつけやすくなります。

 

●陽の気「火」と「木」エレメント

真剣に精油を学ぶ受講生

1日目は、五行の「火」から始まりました。
心や感情と深い繋がりのある「火」。気持ちのバランスが取れていると、温かさや優しさ、愛情を持つことができます。バランスが崩れると情熱がなくなり、満足できず神経質になったり、愛情が持てずに自分中心の考えになっていきます。

そんなときには、優しく包んでくれるフローラルな香りを選びます。
自分自身をうまく愛することができない人にも当てはまります。精神面にアプローチしていくことがテーマでしたが、スピリットを統括しているのも「火」です。感情や精神のバランスをじっくり学ぶことは、自分自身を観察するきっかけになります。セラピスト自身が、バランスの、調和の取れたセラピストであることがまず大事だと考えさせられます。


2日目は、陽の始まりである「木」。
季節でいうと春です。植物は種から芽を出し、ぐんぐん成長していきます。人間に当てはめると意欲を持ち、成長していく過程といえます。気血がのびやかで調和があり活動的に流れていきます。
そんな気持ちの良い「木」ですが、気血の流れが悪くなると滞っていきます。気血の滞りは体調にも表れますが、精神的な面にも表れていきます。目的意識を持てず前に進むことが億劫になるので、決断力や勇気が持てなくなります。希望を持って前進することができなくなります。

そんな心身の変化には、柑橘系の香りです。
シトラスの爽やかな香りは気の流れを動かし、心身も物事も動かして行こうというエネルギーを与えてくれます。

オレンジやベルガモット、グレープフルーツの香りは、日本人が大好きな香りです。真面目で、几帳面で、みんなで一緒に行動することに安心感を持つ傾向のある日本人は、勇気を持って、一人の個として行動することが苦手です。決断力に乏しい面があり、そんな傾向が柑橘類を好む理由かもしれません。
日本人の気質にはとても必要なエレメントですね!

 

●Aromatherapy for Healing the Spirit

ガブリエル先生著書
Aromatherapy for Healing the Spirit

精油

 

●滋養を与える「土」エレメント

五行説の中の「土」。
関連する臓腑は「脾」と「胃」です。脾と胃の主な機能は、エネルギー源である食べ物の消化と栄養分を心身に巡らせていくことにあります。ここで気と陽が不足すると、消化不良を起こし、食欲不振や腹部膨満など、主に胃の働きに影響が出てきます。食べ過ぎも、胃に負担がかかり、気血が滞り、身体がだるくなったりします。

「土」は心身に滋養を与えるので、メンタルでは、精神面をサポートするように、世話を焼いたり、援助をしたり、思いやりを持って行動する気持ちとつながっていくとガブリエル先生は説明します。

「土」の気血が十分でないとどうなるでしょうか。過保護になったり、思いやりを持って接してほしいと強く求めたりします。

この「土」のパワーを補う精油は、料理でも、消化を助けてくれるスパイスの精油です。カルダモンやフェンネル、タイム、そしてレモン。消化を助けてくれるのと同時に、精神的に混乱した気持ちのバランスをはかってくれます。ついつい心配のあまり、過剰に相手に優しくしたり、見返りを強く求めるのは、陽の気である「火」からのエネルギーをうまく消化できていないこともあります。

食事は腹8分目といいますが、感情も8分目。満たされない想いを100%相手に要求してしまうのは、人間関係においても、上手くいかないものですよね。私も、ついつい期待しすぎて、辛くなる時があります。そんなとき、カルダモンとレモンのブレンドオイルをお腹に、ゆっくり深呼吸しながら、セルフトリートメントします。感情の鬱滞は、お腹の硬さや消化機能の低下につながっていることを触りながら実感します。いろんな感情が溜まっていることに気づいたら、ゆっくり深呼吸します。

「土」のエレメントを学びながら、お腹で受け止めている感情について考えました。
助けてくれる精油があるって、とってもありがたいです!

 

●トリートメント×東洋医学

デモンストレーションを行うガブリエル先生

陰陽五行説の解説の後はそれぞれのエレメントに関わりの深い経絡と経穴について学び、実習が行われました。アロマセラピートリートメントでは、精油のブレンドオイルを使って、スウェディッシュマッサージを行います。その上で、東洋医学の考えに基づいた経絡の流れに沿ったトリートメントを行い、気血の鬱滞を取り除いていくようにアプローチしていきます。ゆっくりと、スムーズに流れていく「気」をイメージしながら、穏やかに、でも深い圧を加えていきます。

経穴の作用と精油の作用を重ね合わせて同時に利用していくと、相乗効果を生む様で受講生も感動していました。精油は、鼻から、肺から、皮膚から、成分が心身へ取り込まれていきますが、経絡・経穴へのアプローチと精油、2つからのアプローチは身体を巡る「気」を力強く動かしていきます。

精油のブレンドは、各五行に沿って、ガブリエル先生がブレンドオイルを決めてくださいました。教室中が精油の香りに満たされ、特に「火」のイランイランと、「土」のベチバーを使った時は、かなり強烈で、香りの持つエネルギーって本当に、体験すればするほど実感していきます。肩が緩み、芯がしっかりしてくる感覚が面白かったです。経絡、経穴を意識することで、アロマセラピートリートメントの幅がぐーんと広がります!

 

●陰が深まる「金」エレメント

金の精油クラリセージの解説

五行説の中の「金」。
植物でいえば、光合成と呼吸によるガス交換のことを指し、動物でいえば肺の働きによる空気の交換です。東洋医学でいえば、「気」の交換です。呼吸と深く関わります。

日常で無意識に行う呼吸。いつでもキレイな空気を吸い込むことができればいいのですが、私たちを取り巻く空気はむしろ環境の影響を受け、汚れています。細菌やウィルスも取り込みます。気管支や肺のは、身体にとって外部の敵と闘う場所といえるでしょう。

風邪をひくと、ユーカリやティートリー、パイン、クラリセージの精油を利用することが多いのは、
気管支や粘膜を強壮してくれるからですが、まさしく、これらの精油は「金」を代表する精油です。

外界からの刺激を受けると感情はどうなるでしょうか。傷つきやすくなり、他人と距離を置き、あんなこと言わなければよかったと後悔したり、社交的になれず、引きこもりたくなります。呼吸器を強壮してくれる精油は、そんな閉鎖的な気持ちにも、力強く新鮮な「気」を与え、外界とつながる生命力へとつなげていきます。

生きづらいと感じたり、他人と接することを苦手に感じたりする人は家にこもりがちになりますが、空気も入れ替えずに閉じこもっていることが一番よくないかもしれません。

精油には、その場の空気を一瞬でクリアにする力があります。科学的に消臭するということではなく、場の雰囲気や、気持ちの中の気をクリアにしてくれます。精油を数滴、ティッシュやお湯に垂らして、香りを感じながら深呼吸すると、頭の中もクリアになって、視界が開けてきます。社交的になることが、なかなか難しくても、「金」を強壮して、少しでもポジティブに考えられるようになりたいです。

 

●生命の始まり「水」エレメント

陰陽五行について真剣にお話くださるガブリエル先生

ロンドンで、ガブリエル先生の講義を受けていた時、たくさんの知らない精油や植物に出逢いました。
ブラックスプルースや、ローレル、キャラウェイ、ヤロウ、ヒソップなど、知らない精油が他にもあって、初めて嗅いだ時の感動は今でもはっきりと思い出せます。アトラスシダーや、ヒマラヤンシダーもロンドンでは深く知ることができた精油です。世界遺産キューガーデンズでは、実際の大木も見ることができ、シダーの香りが好きになったのもロンドンに行ってからでした。

これらの精油は五行の「金」とも関わりますが、「水」を代表する精油でもあります。水は、生命ととても深く関わっています。水がなければ、生命は存在せず、東洋医学でも、「水」は生命の源です。

生命の源である生殖機能とも関わる「水」ですが、ガブリエル先生は、「水」のスピリットを、意志や忍耐力、困難な状況に立ち向かうパワーの源としています。自らの意志がなければ、どんなに環境に恵まれていても行動は起こりません。逆に意志が強ければ逆境に耐えることができます。これは生命力ともいえます。

「水」を代表する精油シダーウッドやジュニパーベリーは、身体の水分バランスに働きかけ、むくみケアに利用されています。体をケアする精油の特徴と、感情のケアにも役立てられる精油が東洋医学的に判断すると同じ精油になります。何とも面白いです!

 

●終わりに

セミナー受講生とガブリエル先生

3日間のセミナーは、朝から夕方まで「アロマセラピー×精油×東洋医学」について深く考え、精油のもつエネルギーの捉え方をより広く考察する機会となりました。最終日、「金」と「水」の繋がりが急に曖昧になり、スタッフ同士で熱い議論が繰り広げられ、まだまだ学びは終わらないなと実感しました。共に学んだ仲間と意見交換できることも、とても有意義です。ガブリエル先生は時間の許す限り、生徒一人一人の質問に真剣に答えてくださいました。次回の来日セミナーが今から楽しみです。

陰陽五行説と精油の学びはこれからもIMSIで続いていきます!
「アロマセラピー×東洋医学」
もっともっと深くお知りになりたい方は、IMSIへお気軽にお越しください!お待ちしております!

 
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